スペクトロニクスが5.18億円調達、DUVレーザー量産へ

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
スペクトロニクスが5.18億円調達、DUVレーザー量産へ

スペクトロニクスは2026年10月1日の資金調達発表で、2024年12月のシリーズFを延長する5億1800万円の第三者割当増資を実施したと明らかにし、波長266nmの深紫外(DUV)ピコ秒レーザー発振器の市場導入と量産体制への移行を進める方針を示した。同じ発表でJAFCOの担当者は、事業が「量産体制へ移行するフェーズ」に差しかかっていると表現した。

既存VC2社と新規投資家5社が参加し、Japan Startup Observerの報道は、引受先としてジャフコ系、ニッセイ・キャピタル系、Spiral Innovation Partners運営、DBJキャピタル系、中信ベンチャーキャピタル系、NOBUNAGAキャピタルビレッジ系のファンドを挙げている。調達は実施済みで、レーザーの量産体制づくりと販路拡大はこれから進める計画だ。

追加資金は製造と販売の体制づくりに向かう

資金使途の中心は、開発した光源を継続して供給できる事業へ移すことにある。市場導入の加速と量産体制の整備に加え、国内外での事業展開、経営基盤の強化、人材採用にも充てる方針だ。半導体や先端材料の微細加工を対象にする以上、発振器を製造する能力だけでなく、加工機メーカーや利用企業が求める仕様への対応も事業化の一部になる。

追加調達という位置づけは、先のラウンドで進めた開発を製品供給につなぐ段階を示す。投資家には継続して参加するVCと新たに加わった資金提供者がいる。ただし、増資への参加だけで顧客の量産発注まで決まったとはいえない。今回確実に変わったのは、市場導入と供給体制の整備に使える資本の条件である。

レーザー発振器を安定して届けるには、製造時の品質をそろえ、加工機への組み込みに必要な調整を行い、納入後の技術対応を支える人員も要る。採用や経営基盤の強化が使途に含まれるのは、光源の性能を示す研究開発とは異なる仕事が増えるためと読める。海外展開を進める場合も、製品を送り出すだけでなく、導入先で加工条件を合わせ、継続使用を支える体制が必要になる。

DUVレーザーがパッケージ基板で担う加工

スペクトロニクスの266nm DUVレーザーが担う、半導体パッケージ基板の絶縁層への微細ビア加工

この光源の用途を理解するには、半導体チップを載せるパッケージ基板を見る必要がある。基板はチップの細かな電極と、より間隔の広い配線を持つプリント配線基板をつなぐ中間層だ。内部には配線と絶縁層が重なり、上下の配線を電気的につなぐために絶縁層へ小さな穴を開ける。その穴がビアである。

穴あけの後には、ビアを通して配線層間の接続を作る。チップの電極やパッケージ内の配線が密になるほど、穴を狙った位置に小さく形成することが重要になる。隣接する配線を避けながら層をまたぐ接続を増やせれば、限られた基板面積により多くの配線を通せる。複数のチップを組み合わせるチップレットでは、この接続密度が実装上の課題となる。

短い波長の光は微細な領域へ集めやすいが、光源だけを替えれば目的の穴が完成するわけではない。レーザーを絞る光学系、絶縁材の厚さ、照射条件が加工結果を左右する。必要なのは、絶縁層に穴を開けながら、接続先となる下層の配線を意図した形で残すことだ。スペクトロニクスの発振器は、その加工機に光を供給する中核部品となる。

共同実証で示した微細穴の範囲

東京大学、味の素ファインテクノ、三菱電機、スペクトロニクスによる2024年5月の共同発表では、スペクトロニクスが担当した波長266nmの光源を用い、味の素ビルドアップフィルムの絶縁層に直径3マイクロメートルの穴を形成した。当時の実装基板で層間接続に使われる約40マイクロメートルの穴より小さい加工を示した成果だ。

この実証では各参加者の役割が分かれていた。東京大学は配線を作った基板と加工条件の探索を担い、味の素ファインテクノは絶縁材を用意した。三菱電機は加工機の光学系を改良し、スペクトロニクスはDUVの高出力レーザーを担当した。穴の小ささは、それらを組み合わせて得られた結果であり、発振器だけの性能を測った数字ではない。

絶縁層に狙いどおり穴を開けられることは、細かな配線を実現するための出発点になる。一方、製造工程への採用では、同じ寸法と位置を繰り返し得られるか、加工速度を保てるか、材料や装置の条件が変わっても品質を管理できるかが問われる。共同実証は微細加工の可能性を具体的に示したが、量産時の供給能力や顧客工程での稼働実績まで示すものではない。

量産移行で問われる供給の安定性

今回の調達でスペクトロニクスが進めるのは、実証された用途に向けて発振器を市場へ送り出す体制づくりだ。加工機に組み込まれる光源では、出力などの仕様を満たすことに加え、納入する製品ごとの品質をそろえることが欠かせない。顧客側は光源を単独で使うのではなく、光学系、材料、加工条件を合わせた装置として評価する。

そのため、技術上の焦点は微細な穴を一度作れるかどうかから、必要な品質で加工を続けられるかへ移る。事業上は、発振器を必要な時期に供給し、導入先での調整や保守に応えられるかが重要になる。研究開発から量産へ移る際には、この技術面と供給面の両方を整える必要がある。

発表には資金使途ごとの配分額、量産開始時期、出荷規模は示されていない。今後の進捗を具体的に表すのは、量産体制の稼働や発振器の継続供給、加工機への採用といった動きになる。半導体後工程で求められる微細ビア加工を、顧客の製造条件のもとで安定して支えられるかが次の焦点だ。

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