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OptQCが70億円調達、光量子計算を「普通のデータセンター」へ

|更新日: |著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます| 31
OptQCが70億円調達、光量子計算を「普通のデータセンター」へ

光量子コンピューターを開発するOptQCは2026年8月25日、NTTをリード投資家とするシリーズA2を完了し、第三者割当増資で70億円を調達したと発表した。通信、電機、航空、精密機器、金融、不動産などの企業やファンド、公的機関を含む計21投資家が参加した。

調達資金は、常温・常圧で動く次世代光量子プロセッサーの開発と人材採用に充てる。極低温設備を前提とせず、既存のデータセンターや光通信網に組み込める計算基盤を目指すが、一般的なデータセンターへの商用導入が完了したわけではない。

70億円、91.5億円、200億円超は範囲が違う

OptQCの70億円シリーズA2、株式累計91.5億円、公的助成込み200億円超を区別した資金構成

OptQCのシリーズA2発表 によると、今回の70億円は新株を発行する第三者割当増資で調達した株式資金だ。2025年1月のシード6.5億円、同年10月のシリーズA1・15億円と合わせ、株式による累計調達額は91.5億円となった。獲得済みの公的研究開発助成を加えた資金の確保額は200億円を超える。

したがって、200億円超の全額を今回の投資家から調達したわけではない。70億円は今回の株式ラウンド、91.5億円は創業後3回の株式調達の合計、200億円超は公的助成まで含めた規模を指す。公的助成は対象事業や支出目的が定められるため、事業全般に配分できる株式資金とは性質も異なる。

資金使途として示されたのは、次世代光量子プロセッサーの研究開発と、量子光学、電気回路、機械・制御工学、ソフトウェア、アルゴリズム、事業開発を担う人材の採用だ。助成金を含む総額の大きさだけでなく、今回新たに増えた株式資金が70億円である点が、このラウンドを理解する基準になる。

NTT主導で21投資家、共同事業はこれから

リード投資家はNTT。参加者にはKDDI、三菱電機、京セラ、キヤノンマーケティングジャパン、島津製作所、NGK、ANAホールディングス、三菱地所、SBIホールディングスのほか、金融系・独立系ベンチャーキャピタルと科学技術振興機構(JST)が含まれる。各社の出資額は開示されていない。

KDDIの投資発表 は、同社がKDDI Open Innovation Fund Vを通じて出資したことに加え、OptQCが2026年7月に1号機「MoQuren」の稼働を始めたことを確認している。KDDIは通信やAI計算基盤などの自社資産を活用し、産業利用を支援する方針を示した。

投資家の顔ぶれは、装置開発だけでなく、通信接続、製造、設置施設、産業データ、利用先の開拓までを異業種で補う構成になっている。ただし、OptQCが挙げる材料開発、製薬、金融工学、物流最適化などの用途は応用候補であり、今回の発表時点で個別の顧客案件や共同実証の内容、提供価格は公表されていない。

常温・常圧が「普通のデータセンター」への道を開く

常温・常圧で稼働し、既存の光通信・サーバー設備に接続される光量子計算装置

OptQCが事業上の強みに据えるのは、光を量子情報の担い手として使う方式だ。常温・大気圧で動作するため、極低温を維持する希釈冷凍機や専用の低温施設を前提としない。既存の光通信技術とも接続しやすく、特殊な研究設備に閉じず、通常のデータセンターや光ネットワークへ展開する経路を描ける。

施設側から見れば、巨大な冷却設備の設置空間、冷却のための電力、保守体制といった導入条件を軽減できる可能性がある。ただし、常温動作だけでシステム全体の消費電力や運用費が他方式より必ず低くなるとはいえない。光源、検出器、制御回路、誤り訂正、周辺サーバーを含む比較データは今回示されていない。

技術の核には、光パルスを時間方向に並べて量子状態を扱う時間領域多重(TDM)方式がある。ANAホールディングスの出資説明 は、少数の光学素子で大規模な量子情報処理を目指すクラスター状態生成技術、常温動作、既存の光通信技術を利用できる点を投資判断の背景に挙げている。

約1万量子ビットは達成値ではなく次世代機の目標

稼働中のMoQurenから約1万量子ビットを目指す次世代光量子プロセッサーへの開発工程

70億円の主要な投資先は、MoQurenに続く次世代プロセッサーだ。OptQCは常温・常圧動作を維持しながら約1万量子ビット規模へ拡張し、計算性能を現行機の約100倍にする目標を掲げる。これは今回確認された性能ではなく、シリーズA2の資金で開発する将来目標である。

開発ロードマップでは、産業技術総合研究所のG-QuATで稼働する第1世代機を安定動作重視の実証機と位置付け、その後に高速性を重視した機体、さらに量子的な性能を重視した機体へ進む。研究成果を一足飛びに商用品へ変えるのではなく、安定運転、速度、量子的性能を段階的に検証する計画だ。

量子ビット数や「100倍」という目標だけでは、実際の仕事での優位性は判断できない。対象となる問題、計算精度、エラー率、連続稼働時間、古典計算機を含む処理時間などの条件が必要になるためだ。次世代機の完成時期、第三者による性能評価、販売価格、顧客への提供方式は今回の発表に含まれていない。

調達完了の先で問われる商用運用

OptQCは2024年9月設立で、東京大学大学院工学系研究科・古澤研究室における25年以上の光量子情報処理研究を事業基盤とする。MoQurenの稼働と今回の資金調達により、実働装置から次世代機へ進むための資金と協力企業を確保した段階にある。

一方、通常のデータセンターに設置できる構成と、そこで顧客の計算を安定して処理できる商用サービスは同じではない。「普通のデータセンター」への展開は、常温・常圧と光通信との親和性が開く事業化の経路を示す表現であり、導入実績を意味しない。

今後の焦点は、MoQurenの運用データ、次世代機の開発時期と検証可能な性能、既存データセンターへの接続条件、投資家との共同実証の具体化に移る。70億円の調達は完了したが、光量子計算が一般的な計算施設で継続運用できるかは、これから公開される性能と商用条件によって評価される。

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