
DriveXが1.5億円調達、生産計画AIはExcel依存を崩せるか

東京都渋谷区のDriveXは2026年10月2日の発表で、事業会社や個人投資家らから総額1.5億円を調達したと明らかにし、永田篤広社長は「現場の実績から学び続け、使うほど現場に馴染んでいく生産計画」を目指すと語った。資金は製造業向けAI「スマート生産計画」の開発、製造現場への導入支援、人材採用と組織強化に充てる。
同日のLOGI-BIZ onlineの記事は、具体的な投資家名は開示されていないと伝えた。調達を機に進めるのは、Excelで管理してきた注文や工場の条件を計画に取り込み、ERP・MESとの連携によって製造実績を次の計画へ戻す仕組みづくりだ。計画を作る機能と、工場ごとに異なる運用を定着させる支援の双方が事業上の焦点になる。
調達資金を開発と現場への導入に振り向ける理由
今回の資金使途は、計画を自動作成する機能の拡充だけにとどまらない。ERPやMESと連携し、計画立案から実績反映までを一貫して支える製品の開発に加え、工場での導入と活用を支える体制、開発や事業成長を担う人員にも資金を投じる方針だ。計画を現場で使い続けるには、計算機能と導入時の調整を同時に進める必要がある。
工場の生産計画は、注文を納期順に並べれば完成するものではない。設備の能力と稼働日、担当できる作業者、使える資材、工程の順序、品目を切り替える際の段取りが重なる。ある設備を別の注文に割り当てると、後工程で必要な人員や部材も変わり得る。担当者が経験で処理してきた条件を製品に移すには、各工場で優先順位や例外の扱いを整理する作業が伴う。
導入支援に資金を充てる意味はそこにある。計画の計算方法を共通化できても、現場で守られているルールを登録し、設備や製品が変わった際に更新できなければ、調整作業は担当者のExcelに残る。支援を通じて把握した条件を製品の機能や設定に反映できるかは、個別の導入を継続利用につなげるうえで重要になる。
投資家の具体名に加え、開発、導入支援、採用への配分額や実施時期も公表されていない。このため調達額から導入可能な工場数や事業の収益規模を見積もることはできない。一方で、資金使途に導入支援が明記されたことで、工場ごとの条件を扱う負担が製品開発と切り離せないことは読み取れる。
注文データから工場固有の計画を作るまで

スマート生産計画が想定する流れは、既存データの取り込み、制約を満たす計画の作成、現場での確認と修正だ。入力対象には形式の異なるExcelやCSV、PDFの注文書が含まれる。工場側の情報として設備、人員、稼働カレンダー、工程フローなどを組み合わせ、注文をいつ、どの設備と作業者で進めるかを決める。
- 注文書や既存の表計算ファイルから、注文データと計画に必要な基礎情報を取り込む。
- 設備、人員、資材、工程順序、段取り、納期などの条件を使い、生産順序と設備への割り当てを作成する。
- 作成した計画をガントチャートで確認し、条件を保ちながら必要な箇所を手動で修正する。
ここで変えようとしているのは、Excelというファイル形式そのものより、計画の判断基準が特定の担当者の手元に閉じている状態だ。既存のファイルを入力に使っても、「この設備には特定の技能を持つ作業者が必要」「この品目の後には洗浄を挟む」といった条件を計画に反映できれば、変更時に判断を再現しやすくなる。逆に、条件を登録した後も担当者が表計算ファイルで割り当てを組み直すなら、業務上の依存は残る。
製品は自然言語やルール設定を通じて、工場固有の判断基準を計画ロジックに反映する機能も掲げる。これが役立つ場面は、通常の生産順序から外れる注文や、担当者だけが知る設備の使い分けを扱うときだ。ただし、例外の内容を誰が把握し、条件が変わった際に誰が更新するかは、導入先の運用に関わる。計画を作れることと、その計画を最新の現場条件に保てることは別の作業になる。
ERP・MES連携が実績反映を支える
製品開発で重視されるERP・MES連携は、計画の入力を増やすためだけのものではない。ERPにある受注や資材の情報、MESや現場報告にある工程の進捗を計画に結び付ければ、予定と実際のずれを把握し、次の割り当てに反映する流れを作れる。情報が分断されたままでは、設備停止や納期変更のたびに担当者が内容を転記し、計画を組み直す負担が残る。
スマート生産計画は、設備停止、部材の欠品、遅延、受注変更を受けた再計画を機能として示している。例えば設備が止まった場合、影響を受ける工程だけでなく、後工程の開始時刻や納期との関係も変わる。代替設備を使えるとしても、その設備の能力や作業者、必要な資材が条件を満たさなければ、単純な移動では済まない。再計画の価値は、変更後も工場の制約を満たす割り当てを示せるかにある。
実績反映は、その再計画を次回以降に生かすための段階となる。製造実績や工程進捗から計画との差と原因を捉え、標準工数や作業者の技能に関する情報を更新する構想だ。作業に見込んだ時間と実際の所要時間がずれ続けるなら、当初の条件のまま計画を繰り返しても精度は上がりにくい。現場の報告を取り込み、ずれの理由を次の計画条件に戻せるかが、最初の自動作成だけでは測れない製品の役割になる。
連携の効果は、接続先の名称だけでは決まらない。注文の変更、資材の不足、工程の完了をどの時点で計画に反映するかによって、再計画の内容は変わる。また、変更案を現場で誰が確定するかという運用も必要だ。製品が計画案を示しても、実績の入力や例外の承認が別の手作業として積み上がれば、Excelでの調整を減らす効果は限定される。
改善目安と、事業化を左右する継続運用
DriveXの製品ページは、電子部品や自動車部品などの量産組立工場について、計画作成工数80%削減と生産量5%向上を改善効果の目安として掲げる。同ページは、数値がモデル試算と導入企業での検証に基づき、対象工程や制約条件によって効果が異なるとも注記している。全ての工場で達成された実績を示す数字ではない。
この目安が示すのは、計画作成にかかる時間だけでなく、生産量にも改善余地があるという製品側の見立てだ。ただし、工場の設備構成や品目数、受注変更の頻度が異なれば、同じ条件で比較することは難しい。製品が掲げる効果を事業の強さとして捉えるには、計画を作った後の修正、実績の取り込み、次回の計画への反映まで継続して動くかが重要になる。
資金調達後の事業上の分かれ目は、工場ごとの導入作業を支えながら、その経験を他の導入先でも使える製品機能に変えられるかだ。個別の条件を扱うたびに支援担当者の手作業が大きく増えるなら、導入先を増やすほど支援の負担も重くなる。一方、現場ルールの登録や実績反映が運用に定着すれば、担当者が表計算ファイルで判断を抱え込む範囲を狭められる。今後の導入先で、再計画がどの程度日常業務に使われ、個別調整にどれだけ支援を要したかが、この投資の成果を見極める材料となる。
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