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口約束の案件は危険、フリーランス法で残すべき8項目

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
口約束の案件は危険、フリーランス法で残すべき8項目

動画、イラスト、執筆、配信出演の業務委託を受けるときは、口頭だけで着手せず、発注者と受注者の名称、発注日、仕事内容、納期、納品先、検査、報酬、支払いに関する8項目を、発注書・メール・DMのいずれかで明示してもらい、その記録を残したい。フリーランス法の対象となる発注では、発注者が業務委託後ただちに取引条件を書面または電磁的方法で示す必要がある。

ただし、この8項目だけで追加修正や二次利用まで自動的に決まるわけではない。クリエイター側は明示された条件を保存し、制作仕様、無償修正の限度、権利の利用範囲、検収方法も同じ記録に加えると、作業範囲と支払いを巡る認識のずれを抑えやすい。

DMは使えるが、口頭だけでは明示にならない

公正取引委員会の制度説明 では、取引条件は書面またはメール、SNSメッセージなどの電磁的方法で直ちに明示し、口頭だけで伝えることは認められないとしている。SNSを使う場合は、送信者が相手を特定できるDMなどが対象で、不特定多数に向けたタイムラインへの投稿では足りない。決まった様式はなく、必要事項をメール本文に箇条書きする方法でもよい。

電話や通話で依頼を受けた場合は、発注者から正式な明示を受けるか、少なくとも「本日の合意内容」として要点をメッセージで送り、承認または訂正を求める。受注者が確認文を作っても、発注者自身の明示義務が当然に済むわけではないが、合意の経過を残す材料にはなる。報酬、制作物、納期が確定しないまま本制作へ入ると、後から口約束の内容を立証しにくい。

フリーランス法でいうフリーランスは、業務委託の相手方となる事業者で、原則として従業員を使用しない者を指す。消費者から私用のイラストを直接頼まれた場合など、事業者からの業務委託ではない取引は同法の対象外となるため、相手の立場も確認しておきたい。

発注時に残すべき8項目

イラストの納品前に、発注条件8項目がすべて固定されている状態

公正取引委員会は明示事項を8項目にまとめている。報酬額と支払期日を一つに数える整理であり、検査完了期日と金銭以外の支払方法は、その取引に該当するときだけ法定の明示事項となる。

  1. 発注者と受注者の名称:法人名、屋号または氏名を記す。SNSの表示名だけでなく、請求先となる正式名称と担当者も確認する。
  2. 業務委託をした日:相談を始めた日ではなく、制作や出演を正式に依頼した年月日を残す。
  3. 給付または役務の内容:動画の尺と本数、イラストの点数・サイズ・形式、原稿の分量と掲載媒体、出演時間や拘束範囲などを特定する。
  4. 納品日または役務提供日:「来月中」ではなく年月日を置く。配信出演なら本番日時とリハーサルの日時を分ける。
  5. 納品先または役務提供場所:指定ストレージ、送付先、公開先、収録会場などを特定する。オンライン出演では使用する配信環境も確認する。
  6. 検査完了期日:検査を行う場合に、いつまでに結果を通知するかを記す。検査をしない案件なら、実務上は「検査なし」と確認しておくと分かりやすい。
  7. 報酬額と支払期日:税込・税別の別、源泉徴収、振込手数料の扱いと具体的な支払日を記す。「公開後」「検収後」だけで済ませない。
  8. 金銭以外で支払う場合の方法:該当する場合に必要事項を示す。銀行振込など金銭で支払う案件では、この条件付き項目は法定の明示対象にならない。

委託時に決められない事項があり、そのことに正当な理由がある場合は、未定である理由と決定予定日を当初の明示に入れ、決まり次第ただちに補充する必要がある。単に交渉中だからという理由で全条件を後回しにせず、当初の明示と追記の対応関係が分かる形で残す。

修正と二次利用は8項目より細かく決める

配信出演の当初範囲と、追加料金の対象となる再編集・二次利用が分けられた状態

「イラスト1点」「動画1本」だけでは完成条件が定まらない。用途、サイズ、尺、納品形式、支給素材、初稿日、完成稿日を具体化し、報酬に含む修正回数と対象工程を決める。発注後の方向転換、承認後の別案、納品後の追加編集、別サイズへの展開は、追加報酬と納期変更を合意してから着手する条件にしておく。

例えば、「ラフ段階の修正は2回まで報酬に含む。ラフ承認後の構図変更、納品後の編集、当初仕様にないサイズ展開は、追加の金額と納期を合意してから着手する」と書ける。回数だけでなく、どの段階まで戻る修正なのかを示すことが重要だ。

権利の扱いも制作条件とは分けて確認する。掲載媒体、利用期間、利用地域、広告への転用、切り抜きや改変、第三者への再許諾、クレジット表記、実績公開の可否を列挙し、著作権を譲渡する合意なら対象となる権利と対価を特定する。配信出演では、ライブ配信だけか、アーカイブ公開、短尺動画への再編集、広告素材への転用まで含むかを明示する。

支払日は検収と切り離して置く

作品の納品を起点に支払いへ進み、検査が支払期日を止めない流れ

一定の発注事業者には、成果物を受領した日または役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を定める義務がある。文化庁の文化芸術分野FAQ も、作品を検査するかどうかにかかわらず、納品日から60日以内に設定した期日までに報酬を支払う必要があると説明している。

「検収完了後」「公開後の翌月末」のように、発注者の判断や未確定の公開日に左右される表現は避け、「4月10日納品、5月31日支払い」のように年月日を記す。検査をするなら検査完了日を別に置き、検査が長引くことで支払日まで動く書き方にしない。

支払期日を定めなかった場合は受領日または役務提供日が支払期日とみなされ、60日を超える期日を定めた場合は、受領日または役務提供日から60日を経過する日が期日とみなされる。なお、元委託者から受けた業務の再委託では、再委託である旨など所定の事項が明示されれば、元委託の支払期日から30日以内のできる限り短い期間に支払期日を設定できる例外がある。

確認テンプレートとトラブル時の記録

DM案件では、次の項目を一つのメッセージにまとめ、発注者に明示または確認を求める。前半が法定の8項目、後半がクリエイター案件で補いたい実務条件に当たる。

  • 発注者名・担当者名/受注者名:
  • 正式発注日:
  • 制作・出演内容、仕様、用途:
  • 初稿日/納品日または出演日時:
  • 納品先または実施場所:
  • 検査の有無/検査完了期日:
  • 報酬額(税込・税別の別)/支払方法/支払日:
  • 金銭以外で支払う場合の方法:
  • 無償修正の範囲と回数/追加作業の料金と納期:
  • 著作権の扱い/利用媒体・期間・地域:
  • 二次利用、改変、再許諾の可否:
  • クレジット表記/実績公開の可否:
  • キャンセル、中止、納期変更時の扱い:

条件を変更するときは過去の文面を消さず、変更前後の内容、変更日、追加報酬、新しい納期を追記して確認する。正式発注、各工程の承認、納品通知、受領、修正指示、請求、入金の記録を案件単位で保存すれば、減額や未払いが起きた際に経過を時系列で示せる。

当事者間で解決できない契約上・仕事上の問題は、厚生労働省委託事業の フリーランス・トラブル110番 で弁護士に無料相談できる。相談前に、DMやメール、納品履歴、修正指示、請求内容をそろえ、何が起きたかと質問したい点を時系列で整理しておくとよい。

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