役員報酬は期首3カ月を過ぎると重い、税務と社会保険は別時計

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
役員報酬は期首3カ月を過ぎると重い、税務と社会保険は別時計

役員報酬の通常改定は、法人税上、国税庁の定期同額給与の説明にあるように、原則として会計期間の開始から3カ月を経過する日までに行い、改定前後の各支給時期の額をそれぞれ一定にする。期限後の任意の増減は損金算入に影響し得るため、決議した日だけでなく、どの支給分から新額にするかも重要だ。

健康保険・厚生年金保険の被保険者である役員については、日本年金機構の随時改定の案内に従い、変更後の報酬を初めて支払った月から連続する3カ月を判定し、要件を満たせば4カ月目の標準報酬月額を改定する。税務の起点は会計期間、社会保険の起点は新額の初回支給月であり、決議日をそのまま社会保険の変動月にはできない。

税務の期限は会計期間の開始日から数える

通常改定の期限を考えるとき、最初に確定するのは決算日と次の会計期間の開始日だ。3月決算法人なら、通常は4月1日から新しい会計期間が始まり、原則的な改定時期は6月末までとなる。決算を終えた日や株主総会の開催予定日から漠然と数えると、期限の捉え方がずれる。

定期同額給与は、月ごとなど一定の間隔で支給する給与について、改定前の各回が同額、改定後の各回も同額であることを求める。年度途中に金額が変わったという事実だけで結論は出ない。改定の理由と時期に加え、旧額を最後に支払った回と新額を最初に支払った回を、実際の支給額で区切る必要がある。

決議では、対象となる役員、新しい額、適用を始める支給分を明確にしておくと、議事録と給与計算の対応が分かる。株主総会で支給限度額を定め、個人別の額を取締役会で決議する形もあるため、自社で額を決める手続きに沿って記録する。決議した月の支給から必ず新額にしなければならないわけではないが、決めた内容と実際の支給を一致させることが前提になる。

なお、定期同額給与の形を満たせば、役員給与が無条件ですべて損金になるという意味でもない。不相当に高額な部分は別途損金算入が認められない。通常改定の時期と支給額の揃い方は、まず確認すべき条件として捉えたい。

6月の決議と7月の初回支給を一つのカレンダーに置く

国税庁の役員給与Q&Aは、3月決算法人が6月25日に月額50万円から60万円への増額を決議し、7月31日支給分から新額を適用する例を示している。4月から6月までの支給額と、7月から翌年3月までの支給額がそれぞれ同額なら、定期同額給与に該当するという整理だ。

この例を税務と社会保険の両方で追うと、日付の役割がはっきりする。決算日は3月31日、次の会計期間の開始日は4月1日、増額の決議日は6月25日である。6月末の支給は旧額のままとし、7月31日の支給で初めて新額に切り替わる。税務では期首と決議・支給の並びを見て、社会保険では7月の支給を変動月として見る。

7月、8月、9月に支払った報酬が社会保険の判定期間となり、該当する場合の標準報酬月額の改定月は10月になる。これは支給額以外の条件も満たす場合の時系列であって、増額の決議だけで10月改定が確定するわけではない。月額50万円から60万円になったという差額だけを見て、月額変更届の提出を即決することもできない。

カレンダーには「何月分の報酬か」と「何月に支払ったか」を分けて記す。翌月払いの会社では、対象となる勤務月と実際の支給月が一致しないためだ。社会保険で平均を取る起点は、新額が給与計算に反映された月の呼び名ではなく、その報酬を実際に支払った月である。

月額変更届は3カ月の支給実績で決まる

随時改定には、固定的賃金の変動、変動月から連続する3カ月の報酬平均による標準報酬月額と従前の標準報酬月額との差、各月の支払基礎日数という条件がある。等級差は原則2等級以上を要する。比較するのは新旧の役員報酬額そのものではなく、判定期間の平均額から求めた標準報酬月額と、従前の標準報酬月額だ。

固定的賃金は、支給額や支給率が決まっている賃金を指す。役員の月額報酬を変えれば通常はこの変動に当たるが、そこで判定は終わらない。対象となる3カ月の報酬には、該当する固定的賃金以外の報酬も含めて平均を求めるため、毎月の支給総額を確認する必要がある。

支払基礎日数は、各月とも原則17日以上が必要となる。月給制では給与計算の対象となる暦日数で数えるため、出勤日数をそのまま当てはめない。特定適用事業所に勤務する短時間労働者には11日以上という別の基準があるが、役員の例では、まずその人の被保険者としての扱いと支給形態を確認することになる。

等級の上限または下限にまたがる変更では、1等級差でも随時改定の対象になる場合がある。一方、固定的賃金を増やしたのに、ほかの報酬の減少によって判定上の等級が下がるなど、固定的賃金と等級の動きが逆方向なら対象にならない。単純な増減額より、3カ月の支給実績と従前の等級を照合することが大切だ。

要件に該当した場合、事業主は月額変更届を速やかに提出する。決議直後に将来の平均を見込んで提出する手続きではない。例のように7月が新額の初回支給月なら、9月までの支給実績が揃ってから該当性を判定し、10月の改定につなげる。

期首3カ月を過ぎた変更は理由も問われる

原則的な通常改定の時期を過ぎても、報酬額の変更自体が禁止されるわけではない。ただし、任意の増減を通常改定と同じ条件で扱うことはできず、税務上は損金不算入となる部分が生じ得る。期限後の変更を考える際は、金額を揃えることに加えて、なぜその時期に改定するのかが判断の中心になる。

役員の地位や職務内容の重大な変更など、やむを得ない事情に伴う臨時改定は、通常改定とは別の扱いがある。経営状況の著しい悪化などを理由とする改定も認められ得るが、こちらは減額改定に限られる。一時的な資金繰りの都合や、単に業績目標へ届かなかったことだけでは、その理由には含まれない。

税務上の損金算入と、社会保険上の随時改定は別々に判定する。期首から3カ月を過ぎて変更した報酬でも、被保険者の固定的賃金が変われば、新額を初めて支払った月から社会保険の判定期間が始まる。変更理由を記録する日、旧額と新額の支給日、月額変更届を判定する月を同じ時系列に置けば、税務の期限と社会保険の起点を取り違えずに済む。

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