雇用か業務委託か、契約名より「指揮命令の実態」で決まる

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
雇用か業務委託か、契約名より「指揮命令の実態」で決まる

雇用と業務委託の区別は、契約書の名称より、発注者の指揮監督の下で働き、その労働の対価として報酬を受けるかで判断する。厚生労働省の労働者性の判断基準では、請負や委任という名称にかかわらず、契約内容、働き方、報酬などを個別に総合判断するとしている。

発注者が成果や納期を指定するだけで、直ちに雇用になるわけではない。一方、日々の作業を割り振り、働く時間や場所を管理し、その労働に対して支払う予定なら、業務委託契約を結ぶ前に雇用として扱うべきか検討する必要がある。判断の対象には、契約締結後の実際の運用も含まれる。

成果への注文と、働き方への指示は異なる

業務委託でも、発注者は求める成果、品質、納期、業務範囲を決められる。労働者性を考えるうえで重要なのは、その範囲を超えて、誰が作業の方法や順序を決め、途中で別の仕事を命じ、進捗を管理するかだ。完成した仕事を受け取る関係と、働く本人を継続的に管理する関係では、発注者の役割が違う。

たとえば、条件を合意した制作物について、受託者が作業時間と手順を決めるなら、独立して仕事を進める形を想定しやすい。同じ制作業務でも、発注側の担当者が毎日の着手時刻を指定し、その都度、優先する作業や進め方を本人に命じるなら、指揮監督の実態を検討しなければならない。これは条件を変えた場合の例であり、制作という業務の種類だけで結論が決まるわけではない。

報酬も仕事の進め方と併せて見る。完成物や合意した役務への対価なのか、指示を受けて働いた時間への対価なのかが論点になる。時間単価という記載だけで労働者と決まるわけではなく、成果報酬という記載だけで独立した事業者とも決まらない。支払いの計算方法と、実際の指示や拘束のあり方を一緒に確かめる必要がある。

発注前に確かめる五つの項目

契約案だけを見ても、現場で予定している指示の出し方は分からない。発注担当者と実際に業務を管理する担当者の双方に、次の点を具体的に確認したい。項目ごとの点数で結論を出すのではなく、発注者と受託者のどちらが仕事の遂行を決めるのかを明らかにするための確認表である。

  • 仕事を断る自由:個別の依頼や追加業務を、受託者は断れるか。包括的な依頼を引き受けた後は個々の作業を断れない場合もあるため、拒否できないという事情だけで結論を出さず、契約の範囲と実際の依頼方法を見る。
  • 作業への指示:発注者は成果の条件を伝えるのか、それとも本人に手順、優先順位、当日の担当作業まで直接命じるのか。成果物の修正依頼と、作業中の本人への継続的な指示を分けて考える。
  • 場所と時間:打ち合わせや納期の指定とは別に、毎日の始業・終業時刻や待機場所を発注者が決めるか。指定が必要な理由と、その時間帯に本人がどの程度拘束されるかも確認する。
  • 報酬の決まり方:完成物や合意した業務に対して支払うのか、勤務時間、待機時間、欠勤によって増減するのか。請求書の名目より、実際の計算方法が手がかりになる。
  • 代替の可否:受託者が自らの責任で別の人に業務を担わせられるか、それとも発注者が本人の労働を求めるか。代替性は指揮監督関係を考える補強要素であり、単独の決め手ではない。

必要な機材や費用を誰が負担するか、他社の仕事も引き受けられるかは、独立した事業として働く実態を考える手がかりになる。ただし、道具を自分で用意していても、発注者が日々の手順を指示し、勤務時間を管理しているなら、その事情を無視できない。契約案と予定する現場の運用が食い違う箇所を、契約締結前に洗い出すことが重要だ。

個人への委託と、会社への請負で異なる論点

個人事業主に仕事を委託しながら、実際には発注者がその人を指揮監督している場合は、本人が労働基準法上の労働者に当たるかが問題になる。委託先の会社が雇う人へ発注者が直接指示する場合は、請負と労働者派遣の区分も問題になる。厚生労働省の派遣と請負の区分ガイドは、こうした契約形式と実態のずれを偽装請負の論点として整理している。

外部の会社から人が来るなら、発注者は業務上の注文を委託先の責任者に伝えるのか、現場の働き手へ直接、作業方法や順序を命じるのかを分けて考える必要がある。個人に委託する場合も、発注者が求めるのが独立した業務の遂行なのか、自社の指示に従って働く人員なのかを明確にしたい。相手が個人か会社かによって検討する法的な関係は異なるが、どちらも契約名と現場の指示が食い違うと問題が生じる。

労働者性と社会保険の加入は別に判定する

実態から労働基準法上の労働者と判断されれば、労働時間や賃金などに関するルールの適用が問題になる。健康保険・厚生年金保険についても、「業務委託だから加入不要」とは決められない。ただし、労働基準法上の労働者性だけで加入を機械的に決めるのではなく、事業所の適用と、その人が被保険者となる条件を別に確認する。

日本年金機構の適用事業所と被保険者の説明によると、法人の事業所は厚生年金保険の適用事業所となり、常用的な使用関係は雇用契約書の有無だけでは決まらない。短時間で働く人にも所定労働時間や事業所の条件に応じた加入基準がある。雇用として受け入れる場合は、予定する勤務条件に沿って加入の要否と届出を判断する必要がある。

判断が曖昧なら、契約と運用の両方を直す

発注者が始業時刻を決め、追加業務を割り振り、本人の働き方を継続して管理する必要があるなら、その管理を前提に雇用条件を設計するのが自然だ。働く場所や時間に柔軟性を持たせたいという希望と、雇用か業務委託かの判断は分けて考えられる。業務委託という名称に変えても、日々の指示や拘束の実態は変わらない。

独立した業務として任せるなら、依頼する範囲、成果や提供する役務、報酬、納期、修正の扱いを合意し、受託者が遂行方法を決められる運用にそろえる。発注側の担当者が成果への注文と本人への作業命令を混同しないことも必要だ。契約後に指示や拘束が増えた場合は、当初の書面だけを根拠にせず、その時点の働き方に合わせて契約関係と必要な手続きを見直す。

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