フリーランスへの発注、契約書があっても8項目不足なら不十分

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
フリーランスへの発注、契約書があっても8項目不足なら不十分

フリーランスに業務委託する企業は、契約書を交わしていても、公正取引委員会が示す8項目のうち、その取引に必要な条件を発注後直ちに明示していなければ足りない。検査完了期日と金銭以外の支払方法は、該当する取引に限って明示する項目だ。

条件は契約書のほか、発注書、メール、受信者を特定したSNSメッセージでも伝えられる。従業員を使用する企業などには、厚生労働省が説明する原則60日以内の報酬支払も求められる。担当者は、発注前に相手と案件を確かめ、発注直後に条件を通知し、納品後に受領日と支払期日を照合する。

発注前:対象者と今回の依頼を確かめる

企業の宣材写真を撮影する業務委託で、発注前に作業内容と撮影場所を定める場面

まず、受注者がフリーランス法の対象となるかを発注時点で確認する。従業員を使用しない個人だけでなく、代表者以外に役員がおらず、従業員も使用しない法人も対象になり得る。契約名が業務委託でも、指揮命令など働き方の実態から労働者と判断される場合は、適用される法令が変わる。

次に、基本契約にある共通条件と、今回の仕事で決まる条件を分ける。基本契約に秘密保持や一般的な支払方法が書かれていても、個別の成果物、納期、受領場所、報酬額がそこから分からなければ、今回の発注について必要な明示を済ませたことにはならない。共通条件を別の書面に置くなら、どの条件が今回の発注に適用されるかを受注者が特定できるようにする。

例えば、企業がフリーランスの撮影者に宣材写真を依頼するなら、撮影する対象、撮影日と場所、納品する写真の範囲、報酬、支払期日を発注前に整理しておく。これは通知を遅らせないための準備であり、発注前の社内メモだけでは相手への明示にはならない。依頼について合意したら、決まった条件を直ちに書面または電磁的方法で伝える。

発注直後:該当する明示事項をそろえる

通知には、相手がどの仕事を、いつ、どこで行い、いくらをいつ受け取るのか判断できる情報が必要だ。ひな形の欄を埋めるだけでなく、今回の依頼と記載内容が一致しているかを見る。確認する事項は次のとおり。

  1. 発注者と受注者の名称:双方を識別できるように記す。部署名や担当者名だけを載せる運用では、発注する事業者が特定できるか確かめる。
  2. 業務委託をした日:仕事を委託することに合意した日を記す。作業開始日や納品予定日とは区別する。
  3. 給付または役務の内容:作成する成果物や提供する作業を特定する。写真撮影なら、撮影だけを頼むのか、画像の選定や編集も含むのかが分かる内容にする。
  4. 受領または役務提供の期日:成果物を受け取る日、または作業の提供を受ける日を示す。納品が分かれるなら、それぞれの期日と対象を対応させる。
  5. 受領または役務提供の場所:納品先や作業場所を示す。電子納品なら、受注者が送付先を判断できるようにする。
  6. 検査完了期日:成果物を検査する場合に、その検査を終える期日を示す。検査をしない取引には不要だ。
  7. 報酬額と支払期日:金額と支払う日を示す。「翌月末日支払」のように日を特定できる表現を使い、「翌月末まで」「納品後60日以内」のような幅のある表現だけで済ませない。
  8. 金銭以外で支払う場合の方法:該当する支払手段について必要な事項を示す。通常の現金払いまたは銀行振込だけなら、この条件付き項目を付け足す必要はない。

前回の発注書を流用するときは、古い納期、別案件の納品先、変更前の単価が残りやすい。空欄がなくても条件が誤っていれば、今回の仕事は正しく伝わらない。とくに複数の成果物を一度に頼む場合は、内容、受領日、報酬の対応が後から追える記載にしておくと、支払管理でも対象を取り違えにくい。

未定事項と通知方法:空欄にせず、決定後に補う

発注時に決められない事項がある場合、単に「後日連絡」と書いて終えることはできない。取引の性質上、その時点で決められない正当な理由がある事項については、当初の通知に理由と決定予定日を記す。内容が決まったら直ちに補充して伝え、最初の通知とどの案件でつながるか分かるようにする。

例えば、撮影場所が依頼先の施設の調整待ちで決まらないなら、その理由と決定予定日を当初の通知に示し、確定後は元の依頼を特定して場所を知らせる。すでに明示した内容より細かな作業手順が後から決まる場合と、法定の明示事項そのものが未定だった場合は区別したい。後者では、補充の通知が必要になる。

通知の形式には決まった書類名がない。契約書や発注書を渡す方法のほか、メール本文に今回の条件を列記する方法も使える。基本契約を先に交わして個別発注をメールで行うなら、メールには今回固有の条件を書き、共通条件との関係も分かるようにする。口頭で合意した場合も、そのまま口頭連絡だけで終わらせず、直ちに必要事項を明示する。

SNSやチャットを使う場合は、相手を特定して送信できるメッセージ機能を使う。公開ページへの書き込みだけでは、相手への個別の明示にならない。メッセージや参照先が後から見られなくなることもあるため、発注内容を双方で保存できる形にしておくと、条件の変更や補充の経緯も確かめやすい。

納品後:受領日から支払期日を確認する

企業がフリーランスの撮影成果物を受け取り、報酬の支払期日を受領日から確認する場面

報酬の支払期日は、公正取引委員会のQ&Aが示すように、給付を受領した日を算入し、原則60日以内のできる限り短い期間に定める。納品物を検査する取引でも、通常は検査の完了日を起算日にはできない。電子メールで情報成果物を受け取る場合は発注者側のコンピューターに記録された時点、日数をかけて役務を受ける場合は一連の提供が終わった日など、委託内容に応じて受領・提供の日を捉える。

納品を受けたら、発注時に明示した支払期日と実際の受領日を同じ案件で照合する。請求書が遅れて届いても、あらかじめ定めた支払期日までに支払う必要がある。社内の検収や経理処理に時間がかかるなら、その工程を含めて期日内に払えるよう、発注時から支払日を設定しておく。

複数回の作業をまとめて発注した場合、最後の作業日だけを基準に全件の支払いを遅らせることはできない。月単位の締切制度には、暦の長さによって受領日から60日を超えても、受領日から2か月以内として扱う運用がある。再委託の支払期日にも、追加の条件を明示した場合に適用される例外があるため、その扱いを使う案件は通常の発注と区別して管理する。

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