NDAは署名だけでは守れない、開示前に決める4つの範囲

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
NDAは署名だけでは守れない、開示前に決める4つの範囲

資金調達や共同開発の前には、秘密情報、利用目的、共有先、契約終了後の義務という4つの範囲を決め、協議に必要な情報だけを段階的に開示する。公正取引委員会と経済産業省の事業連携・出資に関する指針は、早期のNDA締結に加え、開示する情報の事前分類、目的の具体化、共有先の限定、契約終了後の守秘義務への注意を促している。

最初の協議で事業の強みを伝えることと、その強みを再現できる資料を渡すことは別の判断だ。相手が今何を評価するのかを確かめ、資料ごとに開示の必要性を判断する。自社も相手の情報を受け取るなら、受領側として守れる条件になっているかを同時に見る。

交渉前:情報を分け、渡す順番を決める

交渉前に、自社の情報を「NDAなしで説明できるもの」「締結後に開示するもの」「協議中も渡さないもの」に分ける。事業概要や公開済みの実績で関心を確かめられる段階なら、未公開の設計やソースコードを添える必要はない。相手の判断に詳細が必要になっても、まず概要や限定した抜粋で足りるかを検討する。

公正取引委員会のスタートアップ契約ガイドブックには、NDAを結ばずにソースコードを開示した後、連携事業者がそれを使った類似サービスの提供を発表した匿名事例がある。契約を結べば中核情報をすべて渡してよい、という意味でもない。目的外利用の立証が難しい場合を考え、事業の核となる情報ほど開示の必要性を厳しく判断する。

投資家が初期段階でNDAに応じない場合は、公開可能な説明資料で事業を示し、機密性の高い資料が必要になる段階で条件を協議する。共同開発でも、実現可能性を示す概要と、製品や技術を再現できる仕様・ノウハウを一度に渡さない。いずれも、相手が求めた資料名ではなく、その資料で判断したい事項から開示範囲を決める。

  • 開示側:資料ごとに秘匿の要否、開示する段階、概要で代替できるかを決める。競争力の中核に当たる情報は、NDA締結後も別途判断する。
  • 受領側:判断に必要な情報を項目単位で伝える。原資料を求める前に、概要や一部の検証結果で目的を満たせるかを確認する。

締結時:目的と共有先を運用できる条件にする

「事業提携の検討」だけでは、受け取った情報をどの案件のために使えるのか曖昧になりやすい。投資の検討、特定の製品に関する共同開発の検討など、対象と判断事項をできるだけ具体化する。検討対象が変わったときは、元の目的を広く読み替える前に、追加開示の範囲と契約条件を確認する。

秘密情報は、開示側が守りたい資料を含み、受領側が識別できるよう定義する。書面や電子ファイルの秘密表示、口頭で伝えた内容を後から特定する方法に加え、公知情報や受領側が独自に開発した情報などの除外事項も確認する。本江法律事務所のNDA解説は、定義と利用目的のほか、社内共有の範囲、漏えい時の対応、終了後の取扱いを確認点に挙げている。

共有先を「関係者」とだけ書くと、別部署、外部の専門家、委託先まで含むのか判断しにくい。目的の遂行に必要な人へ限定し、社外への再提供に事前承諾を要するか、共有先にも守秘義務を課すかを決める。担当者の異動や委託先の変更があった際に、閲覧権限を更新できる条件であることも必要だ。

双方が秘密情報を出すなら、どちらも開示者と受領者になる双務型の条件を確認する。一方の情報だけが保護対象になっていないかは、相手が用意したひな形でも点検したい。さらに契約の有効期間と、終了後も守秘義務が続く期間を分けて読み、返却・消去の対象に複製物が入るかを確かめる。

  • 開示側:自社の資料が秘密情報の定義に入るか、目的外利用と再提供を制限できるか、漏えい時の連絡と対応が決まっているかを確認する。
  • 受領側:秘密指定と除外事項を判別できるか、共有先を実際に限定できるか、終了後に履行できる返却・消去条件かを確認する。

情報開示時:送付内容と閲覧者を記録する

NDA対象資料の共有先を限定し、ほかの資料へのアクセスを分けて管理する

締結後も、資料を送るたびに開示範囲を判断する。送付前に内容、添付ファイル、版、宛先、閲覧権限を確認し、契約で定めた方法で秘密であることを示す。口頭で重要な情報を伝えた場合も、契約に通知方法や期限があるなら、それに従って対象を特定する。

開示の記録には、いつ、誰に、どの版を、何の検討のために渡したかを残す。後で追加資料を求められた際、当初の目的に含まれるかを見直せるからだ。仮に技術の実現可能性を問われても、検証結果の概要で判断できるなら、ソースコード全体を送る必要はない。

受領側は、受け取った資料と閲覧できる人を対応させ、検討に関係しない部署への共有を避ける。想定外の添付物が届いたり、秘密指定が不明だったりした場合は、利用や再共有の前に開示側へ扱いを確認する。担当者が交代しても、受領した版と共有履歴が分かれば、権限の見直しと引き継ぎを進めやすい。

  • 開示側:送付先・日時・資料の版を残し、追加開示の前に目的と検討段階を確認する。閲覧者を増やす依頼は、契約で認めた共有範囲に照らして判断する。
  • 受領側:アクセスを必要な担当者に絞り、権限の追加・削除を記録する。外部への共有が必要なら、先に契約上の承諾条件を確認する。

契約終了時:残る資料と義務を分けて確認する

協議終了後、NDA対象資料の廃棄と保管を分けて確認する

協議が終わったら、共有済み資料、複製物、共有リンク、閲覧権限を照合する。契約に従って返却または消去を進め、開示側は対象と完了状況を確認する。受領側に保存が認められる情報があれば、その理由、保管場所、閲覧できる人を明らかにする。

返却・廃棄と守秘義務の終了は同じ時点とは限らない。モノリス法律事務所の条項解説は、複製物を含む返還・廃棄の条件と、目的終了後に続く秘密保持期間を別々に扱っている。資料を処理した後も、契約で定めた期間は知り得た情報の利用や共有に制限が残り得る。

受領側がデータをどこへ複製したか分からなければ、消去の範囲も確定しにくい。開示時の記録を使い、社内の保存先だけでなく、承諾を得て共有した専門家や委託先の保有分も確認する。直ちに消せない保存分がある場合は、契約上の扱いを確認し、通常の業務利用から切り離して管理する。

  • 開示側:返却・消去の対象を資料名や版で示し、残存分の有無と扱いを確認する。後日別の検討で使う場合は、新しい利用目的と開示条件を決める。
  • 受領側:閲覧権限を止め、保有先と複製物を確認して契約どおりに処理する。保存が認められた情報には、存続する守秘義務を適用する。

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