Z世代の82%が「世界で働く」、AI技能は最重要で最下位

Peblが2026年8月27日に公表した調査 によると、米国のZ世代知識労働者1022人の82%が自らをグローバル労働力の一員と捉え、64%は他国で一時的に働く機会に「非常に」または「極めて」強い関心を示した。調査はPeblの委託によりResearchscapeが7月6~16日にオンラインで実施し、回答は人口構成に合わせて加重されていない。
同じ8月27日発表では、長期的なキャリア成功に最も重要な要素としてAI技能を選んだ回答者は11%で、提示項目の最下位だった。翌28日付の TechRadarの報道 も、人脈形成28%、リーダーシップ・管理経験26%、AI技能11%という順位を伝えている。これはAI技能の必要性や利用頻度を尋ねた結果ではなく、長期的成功に必要な要素を一つ選ぶ設問での優先順位だ。
82%が示すのは移住希望ではなく、労働市場への帰属意識

見出しの「世界で働く」は、回答者全員が海外移住や恒久的な国外勤務を望んでいるという意味ではない。82%という数字が捉えたのは、自分の仕事やキャリアを米国内だけで完結するものではなく、国境を越えた同僚、企業、案件を含む労働市場の一部として認識しているかどうかである。
その認識は具体的な就職判断にもつながっている。回答者の41%は二つまたは三つの国・市場にまたがるキャリアを想定し、59%は国際的な機会がないことが求人を受けるかどうかに影響し得ると答えた。待遇や勤務地などの条件が同じなら、53%が「米国で最良の企業」より「世界で最良の企業」を選ぶとしている。
ただし、ここで測られたのは希望と自己認識であり、実際の海外勤務率ではない。ビザ、家族事情、言語、報酬、税務などの条件を加えたときに同じ選択が維持されるかは、この調査から判断できない。
AI技能の11%は、AIを不要とした回答ではない

AI技能が最下位になった背景には、設問の構造がある。回答者は複数の能力を採点したのではなく、長期的成功に「最も重要」な要素を選んだ。そのため11%は、AI技能に価値がないと考える人の割合でも、AIを使えない人の割合でもない。
上位に置かれたのは、強い職業上の人脈とリーダーシップ・管理経験だった。また、78%はAIの普及によって、異なる国や文化の中で働くといった人間固有の経験がさらに価値を持つと考えている。少なくとも今回の回答では、若手はAIと人間的能力を二者択一にせず、AIが広がるほど代替しにくい関係構築や判断経験が差別化要因になると見ている。
企業のAI運用に対しても、倫理的な理解を示す雇用主を選びたいという傾向が掲載された。ただしPeblの公開ページは、その回答割合を冒頭の要約で65%、本文で88%としており一致しない。このため、倫理的なAI運用を重視する方向性は読めても、割合は訂正や詳細資料による確認が必要だ。
企業の準備には、若手の期待との隔たり
調査は、国際的なキャリアへの関心と米国企業が提供する機会との隔たりも示した。Allwork.Spaceの報道 によると、若手をグローバルな仕事へ十分に備えさせているとして米国企業に最高評価の「A」を付けた回答者は19%にとどまり、国際経験を得る最良の経路に企業を挙げた割合も15%だった。
求人票で「グローバル」と掲げるだけでは、この隔たりは埋まらない。今回の結果から採用上の意味を持ち得るのは、短期の海外配置、国外チームとの共同業務、複数市場を担当する役割など、若手が実際に参加できる機会である。ただし、こうした制度が応募率や定着率を改善することまで調査が実証したわけではない。
日本企業に置き換えられるのは制度上の論点まで

日本企業への第一の示唆は、越境経験を長期赴任や一部の管理職候補だけに限定する必要があるのか、配置制度を見直す余地があることだ。米国の回答者が関心を示したのは恒久的な移住に限らず、一時的な海外就労や複数市場との協働も含む。期限付きの配置や国外チームと責任を共有する職務も、国際経験になり得る。
育成面では、AIツールの操作研修と、人脈形成やリーダー経験を別々に扱う必然性はない。異文化の同僚と課題を定義し、AIの出力を検証し、判断を説明する業務なら、技術利用と人間的能力を同時に育てる設計が可能だ。これは調査結果を日本の制度へ読み替えた編集上の示唆であり、その育成効果を測った実験結果ではない。
AI倫理について企業が示すべき内容も、理念だけでは足りない。業務データを入力できる条件、人が検証する範囲、採用や評価でAIを使う場合の責任者、誤判断への異議申し立て経路など、候補者が運用を判断できる情報が必要になる。ただし、どの開示項目が採用成果に結び付くかは今回の調査範囲外だ。
日本のZ世代を代表しない調査結果
最大の制約は標本である。対象は米国で働くZ世代の知識労働者であり、現場職、求職中の若者、日本で働く同世代を代表していない。非加重のオンライン調査であるため、回答者の属性が米国のZ世代知識労働者全体とどの程度一致するかも、公開された概要だけでは評価できない。
調査を委託したPeblは国際雇用サービスを提供している。委託関係だけで結果が無効になるわけではないが、質問票の全文、選択肢の並び、回答者の年齢・職種構成が十分に示されていない以上、公表された数字はその利害関係と情報の限界を含めて読む必要がある。
現時点で確認できるのは、限定された米国の若手知識労働者の標本で、国境を越えるキャリアへの強い帰属意識が示され、単一の最重要項目を選ぶ設問ではAI技能より人脈形成とリーダー経験が上位だったことだ。日本への適用可能性を判断するには、日本の若手に同一設問を用いた比較調査と、越境配置が応募、昇進、定着に及ぼす実績データが必要になる。
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