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仕事の未来

AI施策は95%、人材が追いつかない企業が見直すべき測定軸

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
AI施策は95%、人材が追いつかない企業が見直すべき測定軸

Gartnerは2026年9月2日、AIスキル準備度に関する分析 を公開した。CHROの95%がAI施策を進めている一方、CIOと上級IT責任者の51%は、必要なスキルの変化が人材供給を上回っていると答えた。

企業が優先すべきなのは、新しいツールが登場するたびに研修項目を増やすことではない。変化対応力とデジタル活用力を土台に、職務別の習熟度、実践学習、業務成果、コンプライアンス・倫理上の事故、育成参加者の定着までを継続して測る必要がある。

95%と51%を「導入成功率と失敗率」にしない

AIツールの利用有無ではなく、誤りの検出と最終判断の理解で従業員の準備度を確かめる場面

二つの数字が示すのは、AI施策の広がりと人材供給への懸念であり、「AIを導入した企業の51%で育成が失敗した」という結果ではない。回答者も、95%はCHRO、51%はCIOと上級IT責任者で異なる。公開ページでは両者が同一母集団に対する一組の設問だったとは確認できないため、単純な差し引きや成功率への読み替えは避けるべきだ。

AIアカウントの配布数、利用者数、研修参加率から分かるのは、展開の規模までである。従業員が誤った出力を見抜けるか、機密情報の扱いを判断できるか、AIを使った仕事の最終責任を理解しているかは、利用記録だけでは測れない。

この隔たりは別の調査にも表れている。2026年7月28日に公表された The Conference BoardのAI人材調査 では、企業幹部35人への聞き取りと約1300人の労働者を対象とする世界調査を基に、55%がAIを定期利用する一方、直近6カ月に勤務先のAI研修を受けた人は33%だった。調査対象や設問はGartnerと異なるため数値は直接比較できないが、導入・利用の拡大が人材準備を自動的に意味しない点は共通している。

ツール名ではなく、AIが仕事をどう変えるかで選ぶ

製品固有の操作だけを追う研修は、機能や画面が変わるたびに更新を迫られる。同分析は、必要な能力を「既存業務の補強」「業務工程の再設計」「新しい仕事の創出」というAIの影響別に整理している。

既存業務を補強する段階では、課題を正しく定義し、AIの提案を評価してリスクを抑える力が重要になる。工程を再設計する職務では、個別作業ではなくシステム全体を捉える思考と、人とAIの役割を調整する力が必要だ。新しい事業や職務を生み出す段階では、将来を見通す力と倫理的な意思決定の比重が高まる。

共通の土台となるのが、変化対応力デジタル活用力である。前者は仕事の前提が変わった際に学び直し、役割や手順を調整する能力、後者は新技術の用途と限界を理解し、業務へ継続的に組み込む能力を指す。共通基盤の上に職務別の要件を重ねることで、ツールの更新と能力開発を切り離せる。

測定は習熟度から定着まで一本につなぐ

習熟度、実践学習、業務成果、事故、定着を同じAI業務について順に照合する評価プロセス

研修参加率の次に置くべきなのは、単発の満足度調査ではない。同分析が挙げた項目を、日本企業が確認しやすい順序に整理すると次のようになる。

  1. 習熟度:自己評価と同僚評価を併用し、職務に即した課題で出力の検証、適用範囲、リスク判断を確認する。
  2. 実践学習:講義や動画の視聴だけでなく、実務に近い課題や例外処理を含む学習への参加と達成状況を見る。
  3. 業務成果:処理時間、手戻り、品質、生産量、市場投入までの時間などを、導入前の基準や比較対象と照合する。
  4. 事故と統制:コンプライアンス違反、倫理上の問題、誤出力の見逃し、未承認利用を把握し、生産性の改善と対にして評価する。
  5. 定着:育成参加者のエンゲージメント、配置後の活躍、離職・定着を追い、獲得した能力が組織内に残っているかを確かめる。

この順序で追えば、成果が出ない原因を分けて考えられる。知識が足りないのか、演習では対応できても正式な業務工程へ移せないのか、利用量は増えたものの品質や事故が悪化したのかによって、見直す対象は研修、職務設計、統制で異なる。

指標の責任主体も分ける必要がある。人事は能力形成と配置、業務部門は品質と成果、ITは利用状況と技術統制、法務・リスク部門は事故と許容範囲を担い、同じ業務単位で結果を照合する。これは公開された測定項目を日本企業向けに組み直した点検順であり、Gartnerが全社共通の目標値を定めたという意味ではない。

研修だけでは若手の経験と社内移動を補えない

定型業務の自動化後に若手の実践機会を再設計し、能力を社内異動や再配置へつなぐ人材育成

人材準備の遅れは、研修コンテンツの追加だけでは解消しにくい。複雑度の低い作業が自動化されると、若手が定型業務を通じて現場知識や判断力を身につけてきた経路そのものが細くなるからだ。

Gartnerの2026年人材戦略ガイド は、AIによって従来の実地学習が減ることを踏まえた若手人材経路の再設計と、採用・人材管理を社内異動や再配置へ結びつける方針を挙げている。どの作業を自動化し、どの判断経験を人に残すかを決めなければ、将来の熟練者を育てる入口を失うおそれがある。

実地経験を維持する方法としては、指導者付きの業務、例外処理への参加、判断理由を説明するレビューなどが考えられる。ただし、これは特定の制度を導入すれば解決するという話ではない。評価すべきなのは研修時間ではなく、次の職務で必要な判断を実際に示せたか、その能力が異動先でも使われているかである。

日本企業に残るのは、職務単位の基準づくり

公開情報からは、95%と51%に関する設問全文、地域別・業種別の内訳、日本企業だけの準備度、各測定項目の標準目標値までは確認できない。したがって、二つの比率を日本企業の現状へそのまま当てはめることはできない。

現時点で確認できるのは、AI施策の有無や研修参加率だけでは、人材が仕事の変化に対応できるかを判断できないということだ。次に問われるのは、各社が職務ごとの能力要件を定め、習熟度、実践、成果、事故、定着を同じ業務単位で追えるか、さらに若手の経験設計と社内異動まで人材戦略へ接続できるかである。

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