株式会社か合同会社か、登録免許税9万円差より資金調達で選ぶ

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます| 1
株式会社か合同会社か、登録免許税9万円差より資金調達で選ぶ

投資家に株式を発行して資金を集める計画なら株式会社、少人数で運営し、株式による調達を予定しないなら合同会社が選択の軸になる。通常税率で設立登記の最低額となる場合、国税庁の登録免許税額表では株式会社が15万円、合同会社が6万円で、差は9万円だ。これは登録免許税の最低額の比較であり、設立費用の総額ではない。

合同会社でも外部から出資は受けられるが、投資家に渡すのは株式ではなく持分で、出資者は「社員」として加わる。株式会社なら株主と経営を担う取締役を分けられる。費用を抑えて創業者が事業を続けるのか、株式を使って出資者を迎えるのかによって、同じ設立費用の差でも重みは変わる。

会社形態を決める判断軸

株式会社と合同会社は、どちらも法人であり、出資者の責任は原則として出資の範囲に限られる。選択を分けるのは、設立時に払う費用と、設立後に誰が意思決定し、出資者をどう迎え入れるかだ。主な違いを、事業が進む順に並べると次のようになる。

  • 設立時:合同会社は登録免許税の最低額が低く、公証人による定款認証も不要。株式会社は定款認証を受ける。
  • 日々の運営:株式会社では株主総会と取締役がそれぞれ役割を持つ。合同会社では、定款に別段の定めがなければ出資者である社員が業務を執行する。
  • 任期:株式会社の取締役には法定の任期がある。合同会社の業務執行社員には、取締役と同じ法定任期はない。
  • 出資者の交代:株式会社では株式、合同会社では持分を移転する。どちらも、定款や会社法に基づく承認の要否を確認する必要がある。
  • 外部からの資金:株式会社は株式を発行できる。合同会社は新たな社員の加入によって出資を受けられるが、株式は発行できない。

ここでいう資金調達は、融資と出資を分けて考える必要がある。借入れを中心に事業資金を賄うなら、株式を発行できることは選択の決め手になりにくい。一方、投資家に株式を引き受けてもらう予定が具体的なら、設立時の支出だけで会社形態を決めると、後で必要な調達手段と食い違う。

設立実費には定款認証も加わる

株式会社の設立には定款認証が加わり、合同会社には不要となる手続きの違い

合同会社も株式会社も定款を作成する。違いは、株式会社の定款には公証人の認証が必要で、合同会社には不要なことだ。日本公証人連合会の手数料表では、株式会社の認証手数料は資本金の額等に応じて1万5,000円、3万円、4万円、5万円に分かれる。最も低い額には発起人の人数や定款の内容について追加の条件があり、すべての株式会社に適用されるわけではない。

定款を紙で作るか電子的に作るかによっても、印紙税の扱いは変わる。株式会社と合同会社の見積もりを比べるなら、作成方法をそろえ、登録免許税、定款認証、専門家に依頼する場合の報酬などを別々に見ると差の理由が分かる。定款認証が不要でも、合同会社の定款作成そのものを省けるわけではない。

設立時の負担を抑えられることは、売上が立つ前の資金を事業に残せるという利点になる。ただし、株式による出資を近く予定している場合は、当初の費用に加えて、その会社形態のまま予定する調達ができるかを考える必要がある。設立時の税額だけで将来の手続きまで比較することはできない。

意思決定と役員任期の違い

合同会社の「社員」は従業員ではなく出資者を指す。定款に別段の定めがなければ社員が業務を執行し、社員が複数いる場合の通常の業務は過半数で決める。東京都よろず支援拠点の会社法解説は、定款で業務執行社員を定め、出資者の中で経営を担う人を分けることもできると説明している。

この柔軟さは、共同創業者が増えるほど定款の設計に関わる。普段の業務を誰が決めるかと、新しい出資者を迎えるために誰の同意が要るかは同じ問題ではない。定款変更には原則として総社員の同意が必要になるため、出資者を増やす計画があるなら、業務執行、代表、利益配分を最初から区別して考える意味がある。

株式会社では、株主が取締役を選び、取締役が経営を担う。創業者が株主と取締役を兼ねることもできるが、外部投資家には株主として参加してもらい、日々の経営を担ってもらわない形も取れる。この役割分担は、投資家が増えた後に誰が会社を動かすのかを整理しやすくする。

取締役には任期があり、同じ人が続ける場合も任期満了に伴う選任と登記の管理が生じる。合同会社の業務執行社員には同じ法定任期がないため、任期満了だけを理由とする重任登記は生じない。ただし、社員の加入や退社、代表社員の変更などがあれば、それに応じた手続きや変更登記が必要になる。

外部出資、持分移転、後からの変更

合同会社の社員加入と株式会社の株主参加で異なる外部出資の形

合同会社も、新たな社員を迎えて出資を受けられる。ただし株式は発行できないため、投資家が受け取る権利と経営への関わり方は、持分と定款に沿って設計する。株式会社で株式を発行する場合は、出資後の持株割合や議決権を踏まえて、創業者が経営を続ける条件を考えることになる。資金調達ラウンドの意味を考えるときにも、調達額と出資後の権利は別の論点だ。

個人投資家の税制優遇を調達条件に含めるなら、会社形態はさらに重要になる。国税庁のエンジェル税制の説明では、対象となる会社と取得する株式に要件が設けられており、合同会社の持分取得は対象に含まれない。株式会社を選んだだけで適用される制度でもなく、会社と投資家の双方について要件を満たす必要がある。

出資者が後で退出する場合も違いが出る。司法書士法人LSOの会社形態の解説によると、合同会社の持分譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要で、定款による別段の定めなどの例外がある。株式会社の株式も常に自由に譲渡できるわけではなく、非公開会社では定款により会社の承認を要することがある。出資者の交代を想定するなら、どちらの形態でも承認の仕組みを見ておきたい。

合同会社で始め、株式調達が必要になってから株式会社へ組織変更することはできる。ただし、組織変更計画、社員の同意、債権者保護、公告、登記を伴う。初めは創業者だけで事業を進め、外部出資の予定が具体化していないなら、合同会社の設立負担と運営上の柔軟さを選ぶ余地がある。株式で投資家を迎える計画が既にあるなら、変更に要する手続きも含め、最初から株式会社を選ぶ判断が成り立つ。

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