従業員ゼロのHENNGE AI、実務はAIでも営業は本社に残す

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
従業員ゼロのHENNGE AI、実務はAIでも営業は本社に残す

HENNGEは2026年10月1日の設立発表で、東京都渋谷区にHENNGE AI株式会社を設立し、今泉健代表取締役と永留義己取締役以外の従業員を置かないと明らかにした。開発、カスタマーサポート、マーケティングなどの実務にはAIエージェントを導入し、営業活動と一部のバックオフィス業務はHENNGE本社へ委託する。

ITmedia AI+の報道もこの分担を伝え、企業向けに開発するAI Gatewayサービスは2027年9月までの提供開始を予定すると記している。設立済みの新会社、社内で利用中の仕組み、これから提供する外部向けサービスは、それぞれ進み具合が異なる。

開発、マーケティング、サポートを担うAI

新会社でAIエージェントに割り振る仕事は、製品をつくる開発だけではない。マーケティング、顧客からの問い合わせに対応するカスタマーサポート、バックオフィスも対象に含まれる。特定の部署だけでAIを補助的に使うのではなく、会社の実務を役割ごとに組み立てる構想だ。

HENNGE AIには、この組織構成そのものを検証する役目もある。AIエージェントに仕事を任せたときの利点と課題を調べ、その知見をサービス開発にも生かす考えだ。ただし、担当業務として挙がったことと、その業務の全工程がすでにAIだけで完結していることは同じではない。実際の運用について公表された具体例は、より限定されたものだ。

今泉氏は設立時に公表した説明で、AIエージェントが役割を分担して働く様子を「これは比喩ではなく、今実際に動いているものです」と記した。挙げた例では、取締役役のAIエージェントに音声で進捗を尋ねると、必要に応じて別のエージェントへSlackで問い合わせ、得た答えを音声で返す。

今泉氏によれば、必要な役割のエージェントは現在も増やしている段階だ。外部のエージェントを加える方法も模索しており、規定外の動作を監視して止める仕組みは今後取り入れたい機能として説明している。進捗への応答は稼働例、監視機能は構想という違いがある。

営業と一部の事務を本社へ委託

営業活動は、HENNGE AIのAIエージェントではなく、親会社のHENNGEが委託先として担う。マーケティングを新会社のAI担当業務に含める一方、顧客に向けた営業を本社に残す分担だ。従業員を置かないという数字は新会社の人員配置を表しており、顧客と接する仕事まで人手を使わないという意味ではない。

バックオフィスは、AIと本社の担当が分かれる領域だ。AIエージェントの実務として挙げられているが、その一部は本社へ委託する。どの事務作業をどちらが受け持つかという細かな境界は公表されていない。少なくとも、管理業務のすべてを新会社のAIだけで処理する構成ではない。

この分担により、AIエージェントが担う開発やサポートと、本社が引き受ける営業を別々に動かせる。新会社の従業員数だけを見ても、サービスをつくり、顧客に届け、事務を処理するためにグループ内で使う人手の全体像は分からない。HENNGE AIの組織を理解するには、会社に直接所属する人員と、本社から提供される業務を分けて見る必要がある。

経営する取締役と、実務上の「取締役役」

人間の取締役は、HENNGEの執行役員でもある今泉氏と、同社の取締役副社長でもある永留氏だ。役員は新会社の経営を担い、AIエージェントには実務上の役割が割り当てられる。音声で進捗を答える「取締役役」のAIは、会社の取締役として登記された人間の役員とは別の存在である。

HENNGEは新体制によって意思決定を速める方針を示している。一方、どの経営判断をAIが提案し、どの段階で取締役が決めるのか、詳細な手順は明らかにしていない。確認できる役割分担は、経営に当たる人間の役員、開発やサポートなどの実務に入るAIエージェント、営業と一部事務を担う本社という構成だ。

人間の役員がいることと、取締役以外の従業員を置かないことは両立する。役員と従業員は組織上の立場が異なるためだ。今泉氏と永留氏はHENNGE側の役職も兼ねており、新会社の実務をAI中心に組み立てながら、経営とグループ内の連携には人が関わる。

AI Gatewayは社内利用を基にサービス化へ

HENNGE AIが開発する外部向けAI Gatewayサービスの土台には、HENNGE社内で使っている同名の仕組みがある。社内のAI Gatewayは複数の生成AIモデルを切り替え、利用状況を可視化・管理するものだ。新会社はその仕組みを基に、企業がAIエージェントを運用するためのサービスを開発する計画で、外部向けサービスは提供前の段階にある。

機能計画の一つは、利用者やグループごとに使える生成AIモデルを割り当てる管理機能だ。モデルを追加、変更、削除できるようにし、誰がどのモデルを利用できるかを組織側で設定する。複数のモデルを導入する企業では、部署ごとの利用範囲をそろえるための仕組みになる。

費用については、モデル別の利用コストの算出と可視化を計画している。予算に応じた上限や利用方針も設定できるようにする構想だ。利用量が増えたときに、どのモデルの費用が発生しているかを把握し、組織として支出を制御することを狙う。

セキュリティ機能には、全社共通のルールからグループ・個人単位の権限制御までが含まれる。HENNGE OneのID管理基盤との連携によるシングルサインオンや、端末単位のアクセス制御も計画に入っている。AIエージェントやボットなど、人間以外のIDを管理・認証する基盤への拡張は、さらに先の構想として位置付けられている。

提供時の料金と詳しい利用条件は、サービス開始時に示される予定だ。新会社が進める組織運営の検証とともに、外部向けAI Gatewayがどの機能を備えて提供されるかが、次に明らかになる具体的な点となる。

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