
副業の労働時間は会社ごとに切らない、通算管理の実務

従業員が副業先でも雇用され、労働時間規制を受ける場合、勤務先が別でも労働時間は通算する。厚生労働省の副業・兼業ガイドライン解説は、開始前に副業の内容を確認し、本人の申告を基に両社の時間を管理する手順を示している。
労務担当者は、まず副業先での働き方が通算対象かを見極め、勤務予定と実績の報告方法を決める。そのうえで原則方式か管理モデルを選び、自社が負担する割増賃金と、本人の働き過ぎを防ぐための対応を整理する。
副業先の契約形態と働き方を分ける

通算の出発点は、副業という名称ではなく、副業先でも労働基準法の労働時間規制を受ける労働者として働くかどうかだ。正社員、パート、アルバイトなどとして別の使用者に雇われる場合は、事業場をまたぐ労働時間が通算される。一方、自ら事業を営む仕事や、実態も請負・委託である仕事の時間は、この規定による通算の対象にならない。
申請書に「業務委託」と記されていても、契約名だけで区分は確定しない。就労の実態が労働契約なら、労働基準法などの適用を受ける。担当者は副業先での業務内容と働き方を本人に確認し、区分が曖昧な案件を名称だけで通算対象から外さないようにする。
雇用されていても、管理監督者など労働時間規制が適用されない働き方の時間は、同じ通算の扱いにはならない。ただし、通算対象から外れる就業でも疲労は生じるため、就業時間が長くなり過ぎていないかは別に把握する。ここで「法定労働時間の計算に入れるか」と「健康のために就業状況を聞くか」を分けておくと、後の判断が混ざらない。
本人の申告は予定と実績を分けて受け取る
他社の勤怠を自社で直接記録することはできない。開始前には、相手先との労働契約を結んだ時期と期間、所定労働日、始業・終業時刻、所定外労働の見込みと上限を本人から確認する。契約の先後は原則方式の計算順序に、勤務予定は両社で働かせられる時間の判断に関わる。
開始後は、予定どおりに働いたか、シフト変更や所定外労働があったかを報告してもらう。誰が報告を受け、どの頻度で自社の勤怠と照合し、変更を給与計算へ反映するかまで決めておきたい。必ず毎日報告を求める必要はなく、法令を守れる範囲で一定期間分をまとめる方法や、予定と異なったときに報告する方法も考えられる。
本人から他社の労働時間について申告などがない場合、その把握できない時間まで通算する必要はないとされる。ただ、それを制度の前提にすると、副業の勤務が変わったときに判断材料を失う。相談や自己申告をしやすい窓口を設け、報告したことを理由に不利益に扱わず、勤務条件の変更も届けられるようにすることが運用の土台になる。
原則方式は契約順と実際の就労順で計算する
原則方式では、月の勤務時間を両社分まとめて足すだけでは、どちらの会社が割増賃金を払うか決められない。厚生労働省の原則的な通算方法では、所定労働時間を契約を結んだ順に通算し、その後、所定外労働時間を実際に働いた順に通算する。契約した順序と残業が発生した順序は、別々に記録して考える。
先に結んだ契約の所定勤務を足した結果、後から結んだ契約の所定勤務の一部が法定労働時間を超える場合、その超過部分は後契約側の時間外労働となる。所定外労働が両社で生じれば、実際に先に行われたものから足し、法定労働時間を超えた部分を見つける。所定時間を超えた勤務でも、通算後に法定労働時間内なら、それだけで法律上の割増賃金の対象にはならない。
各社は、通算で法定時間外労働となった時間のうち、自社で働かせた分について割増賃金を支払う。自社でその時間を働かせるには、自社の36協定の締結・届出と協定の範囲内での管理も必要だ。日ごとの超過を確認した後は、同じ時間を重複して数えないようにして週の超過も判定する。
両社の所定外労働が頻繁に起きる案件では、働いた順序と実績を追う負担が増す。その場合は、開始前に働かせる時間の枠と割増賃金の扱いを決める管理モデルが、申告と計算の負担を抑える選択肢になる。
管理モデルは両社の上限と支払い方を先に決める

管理モデルでは、先契約側の法定外労働時間と後契約側の労働時間全体について、各社が上限を設定する。厚生労働省の管理モデル解説は、両者の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となり、各社の36協定の範囲にも収まるよう上限を決める方法を示している。両社がそれぞれの上限を守ることが、相手先の実労働時間を逐一把握せずに運用できる条件だ。
導入は、一般に先契約側が本人に提案し、本人を通じて後契約側が応じる流れを想定する。会社間で直接連絡することは必須ではないが、両社と本人が各自の上限を共有する必要がある。後契約側が応じていない案件では、自社だけで管理モデルを選んだものとして扱わず、原則方式で必要な申告と通算を続ける。
給与計算では、後契約側が先契約側の実績にかかわらず、自社の労働時間全体を法定外労働として扱い、割増賃金を払う。先契約側は、自社の法定外労働時間について支払う。この支払い方を先に固定するため、後契約側は毎回、先契約側で何時間働いたかを照合せずに済む。
上限は一度決めて終わりではない。自社の予定外の残業で上限を超えそうなら勤務を調整し、変更が必要なら本人を通じて相手先とも共有する。設定した上限を超えて働かせた結果、時間外労働の上限規制に違反した場合は、超えて働かせた使用者が通算に関する責任を問われ得る。
健康確認は割増賃金の計算と分けて続ける
管理モデルで相手先の実労働時間を逐一把握しなくても、本人の疲労を見落としてよいわけではない。副業先を含む業務量や健康状態を本人が伝えられるようにし、長時間勤務や休息不足が分かったら、自社の時間外・休日労働を抑えるなど勤務の調整につなげる。通算の対象外となる委託の仕事についても、就業時間が長くなり過ぎないよう配慮する。
健康診断や長時間労働者への面接指導など、法定の健康確保措置の対象者を選ぶ際には、副業先の労働時間を当然に通算する扱いではない。ただし、会社の指示で副業を始めた場合は、原則として副業先との情報交換などで時間を把握・通算し、その時間に基づいて健康確保措置を行うことが適当とされる。通常の副業でも、本人の状況に応じて法定の措置を超える対応を検討できる。
申請案件の記録には、契約形態、本人が申告した勤務予定と変更、選んだ通算方法、両社の時間上限、実績の報告経路、健康状態を聞く機会を結び付けておく。そうすれば勤務条件が変わったとき、給与計算に必要な通算と、働き過ぎを防ぐための勤務調整をそれぞれ見直せる。
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