ハイブリッド勤務の就業規則、通信費と勤怠を曖昧にしない

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
ハイブリッド勤務の就業規則、通信費と勤怠を曖昧にしない

出社と在宅勤務を併用する制度は、既存の就業規則と異なる労働条件を確認し、対象者、勤務場所、労働時間、費用負担を定めるところから作る。厚生労働省のテレワークモデル就業規則は、通常勤務と労働条件が同じなら規則を変更せずに実施できる一方、従業員に通信費を負担させるなど固有の条件が生じる場合は変更が必要としている。

全員に適用する条件は就業規則またはその一部となる勤務規程に置き、勤務日ごとの選択は申請フォームで受け、承認後の変更処理は管理職向け運用メモに定めると整理しやすい。例えば在宅勤務を認める条件は規程に、希望日はフォームに、承認済みの日に出社を求める連絡順は運用メモに置く。勤務予定が変わったとき、勤怠と交通費の記録をどちらも直せる設計にする。

現行の労働条件と、変更が必要な条項を分ける

新しい条文を書く前に、就業場所、始業・終業時刻、休憩、賃金、通勤手当、備品の負担を現行の就業規則と労働契約から拾い出す。在宅勤務でも同じ扱いを続ける項目と、勤務場所によって扱いが変わる項目を分ければ、改定すべき条項が見える。テレワーク勤務規程を別に作る場合も、それを就業規則の一部として扱う関係を明確にする。

採用時から在宅勤務を予定する人には、労働条件として明示する就業場所と、その変更の範囲も確認する。すでに勤務場所を限定して合意している人に、規程の新設だけで別の場所での勤務を当然に命じられるとは限らない。不利益を伴う条件変更では、本人との合意、または就業規則変更の合理性と周知が問題になるため、制度の対象範囲と既存の約束を照らし合わせる。

就業規則の作成・届出義務がある事業場で規則を変更するなら、過半数労働組合または過半数代表者の意見を聴き、意見書を添えて届け出、従業員に周知する。勤務規程を本体から切り離して作っても、この手続きを省く理由にはならない。初めて規則を整える場合は、就業規則の届出手順も確認できる。

対象者・場所・申請は、出社日変更まで決める

対象者を「会社が認めた者」とだけ書くと、所属長によって判断が変わりやすい。対象業務、本人の希望、在宅で業務を行える環境、情報管理の条件を挙げ、承認者と判断基準を定める。出社が必要な仕事を含む職種でも、業務ごとに在宅勤務の可否を判断できるなら、職種全体を一律に除外する必要はない。

勤務場所は自宅に限るのか、会社が認めた別の住居やサテライトオフィスも含むのかを明記する。自宅以外を認める場合は、通信環境、機密情報を扱える場所かどうか、場所を変更する際の申請を決める。利用資格の承認と個々の勤務日の申請は分け、フォームでは希望日、勤務場所、予定時間、連絡方法を受け付ける。

承認済みの在宅勤務日を出社日に変更できる条件も、申請と同じ流れの中に置く。誰が業務上の理由を判断し、いつ本人へ伝え、予定の変更をどこに記録するかを管理職向け運用メモに記す。本人の事情による急な変更や、会社からの緊急の出社指示には例外承認の経路を設け、変更後の勤務場所を勤怠と費用精算の担当者に伝える。

勤怠は予定ではなく、実際に働いた時間で記録する

在宅勤務中に出社を求められた労働者が事業場へ移動し、その時間の記録が必要になる場面

出社日と在宅勤務日に適用する労働時間制度を先に決める。通常の固定時間勤務を続けるなら、勤務場所が変わるだけで始業・終業時刻や休憩の扱いを変えない。会議の設定時間や時間外の連絡への対応も管理職向け運用メモでそろえ、在宅勤務者だけに早朝や夜間の応答を求める運用を避ける。

テレワークガイドラインは、端末の使用時間など客観的な記録を基礎に始業・終業時刻を確認する方法を示し、自己申告を使う場合も記録との著しいずれが分かれば補正するよう求めている。申請フォームには予定の場所と時間を、勤怠記録には実際の始業・終業、休憩、中抜け、時間外労働を残す。端末が起動していた時間をそのまま労働時間とみなさず、実態を反映しているか確認する。

中抜けを記録する運用なら、その時間を休憩として扱って終業時刻を繰り下げるのか、別の方法を取るのかをあらかじめ定める。在宅勤務中に業務のため急きょ出社を命じる場合、場所間の移動を一律に休憩へ振り替えてはならない。移動中の自由利用が保障されていなければ、その時間は労働時間に当たるため、出社指示の理由と移動時間を勤怠修正に反映する。

時間外・休日労働には事前承認の経路を設ける一方、承認の有無とは別に実際の労働時間を把握する。管理職が勤務時間外に業務を指示したのに、承認がなかったとして記録から消す運用はできない。フレックスタイム制を新たに採用するなら、在宅勤務の申請手続とは別に、その制度に必要な就業規則と労使協定を整える。

通信費と交通費は、異なる支給条件で定める

費用条項では、会社貸与の端末・回線、私用回線、電話代、電気代、備品、郵送費を分けて負担者を決める。会社が負担する費用には、実費か定額か、上限、請求期限、明細の要否を付ける。自宅に既存の回線がある人と新たに回線を引く人では費用の生じ方が違うため、開通時の費用も対象に含めるか明記する。

従業員に通信費や作業用品の費用を負担させる定めは、担当者間の取り決めだけで済ませず、就業規則に記す。定額の在宅勤務手当で通信費などを補う場合は、給与規程との関係にも注意が要る。費用の実額に応じて精算する仕組みと、一定額を毎月支給する仕組みでは賃金の扱いが異なり、定額手当は割増賃金の算定基礎にも関わる。

通勤手当は通信費とは別の項目にする。定期代を支給し続けるのか、実際に出社した日の往復運賃を支給するのかを定め、既存の支給条件を変える場合は労働条件の変更として扱う。急な出社指示で生じる交通費についても申請先と精算方法を決めれば、勤務予定だけが変わり、支給額には反映されない状態を防げる。

安全衛生と情報管理を、利用条件に結び付ける

在宅勤務を始める前に、自宅の椅子と採光を調整して作業環境を確認する場面

在宅勤務を認める際は、作業環境を確認する方法と相談先を用意する。厚生労働省のガイドライン掲載ページには、事業者用の安全衛生チェックリストと、労働者が自宅の作業環境を確かめるためのチェックリストがある。申請時に確認した事実を残し、照明、机や椅子の配置などに問題があれば、本人と会社で改善方法を相談する。

情報管理では、会社貸与端末と私有端末の利用条件を分ける。持ち出せる情報、保存先、第三者から画面や資料が見える場所での作業、端末を紛失した際の連絡先を定め、私有端末を認めるなら会社のセキュリティ基準を承認条件にする。勤務場所を変更する申請では、新しい場所でも同じ条件を満たせるかを確認する。

規程・フォーム・運用メモを一つの流れでつなぐ

規程本文には、対象者、許可する場所、労働時間制度、費用負担、安全衛生と情報管理、出社指示や承認取消しの条件を置く。申請フォームには勤務日、場所、予定時間、連絡方法、例外承認の理由を記録する。管理職向け運用メモには承認基準に加え、予定を変更した際の連絡順、勤怠修正と交通費精算の担当者を記す。

条件付きの例として、承認済みの在宅勤務日に業務上の理由で出社を求める場合を考える。管理職が指示と連絡時刻を記録し、本人が実際の勤務場所と労働時間を申告し、担当者が交通費を精算できれば、一つの変更を処理できる。途中で判断者や記録先が分からなくなるなら、その箇所を規程、フォーム、運用メモのいずれかに明記する。

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