Claudeの利用枠が勝手に減る、MFAを越えるセッション窃取に注意

2026年8月30日から9月1日にかけて、Anthropicが一部のClaude利用者へ、端末から盗まれた認証済みセッションによる不正利用をメールで警告したと相次いで報じられた。8月30日付の BleepingComputerの報道 によると、攻撃者は本人が操作していない間にClaudeの利用枠を消費し、Anthropicは検知したアカウントの関連セッションをサインアウトさせ、保存済みの支払い方法を削除し、不正と判断した請求を返金している。
原因として示されたのは、Claudeから感染する専用マルウェアではなく、端末内のログイン情報を広く集める情報窃取マルウェアだ。利用枠が補充された後、Claudeを使っていないのに再び減る現象は警告メールで挙げられた兆候の一つであり、該当する場合はパスワード変更や再ログインを急ぐ前に端末を隔離して駆除する必要がある。
MFAを破らず、認証済みの状態を持ち出す

今回の「MFAを越える」とは、MFAの暗号を破ったり、機能を無効にしたりすることではない。通常のログインが完了すると、ブラウザーには認証済みであることを示すセッションCookieなどが保存される。有効なセッションが使われている間、サービスは毎回パスワードやMFAコードを要求しない。
情報窃取マルウェアがこのセッション情報をコピーし、攻撃者が別の環境で再利用すると、Claudeには認証後のアクセスとして届き得る。つまり、攻撃者はMFAを正面から突破するのではなく、MFAが要求される新規ログインの工程そのものを省く。MFAは依然としてパスワード窃取への重要な防御だが、すでに発行されたセッションまで無条件に守るものではない。
この仕組みのため、感染端末でパスワードを変更してすぐログインし直す対応は危険を残す。マルウェアが動き続けていれば、新しい認証情報や新たに発行されたセッションも再び取得される可能性がある。利用枠の異常はアカウントだけでなく、ログインに使った端末の侵害として扱う必要がある。
複数の情報窃取マルウェアが警告対象に
警告で挙げられたのは、Windows上のVidar、LummaC2、StealC、RedLine、Acreedと、少数のmacOS端末で確認されたAtomic Stealer(AMOS)だった。特定の一種類や一つのOSに限られた問題ではなく、ブラウザー内のCookie、保存パスワード、ほかのアプリの認証情報を集める汎用型マルウェアが共通点となっている。
Anthropicの警告内容では、これらのマルウェアがClaudeに関連して作られた、Claude経由で導入された、あるいはClaude上の操作が感染原因になったと考える根拠はないとされている。端末が非公式なダウンロードや悪意あるアプリなどを通じて先に侵害され、その端末から収集された情報の一部としてClaudeのセッションが盗まれた、という説明だ。
同じブラウザーにメール、業務システム、クラウドストレージ、金融サービスなどの認証情報を保存していた場合、確認対象はClaudeだけでは終わらない。利用枠の減少は侵害を発見する手掛かりにはなるが、盗まれた情報の範囲や被害の上限を示すものではない。
復旧は「隔離と駆除」を終えてから

9月1日付の Malwarebytesの対処内容 も、マルウェアを除去する前にClaudeへ再ログインしたりパスワードを変更したりしないよう求め、除去後にメール、保存していた重要なパスワード、カード利用状況を確認する流れを示している。再窃取を避けるには、次の順序で復旧する。
- 端末を隔離し、マルウェアを駆除する。感染が疑われる端末をネットワークから切り離し、OSとセキュリティ製品を更新して完全スキャンを行う。検出物を除去できない場合や感染範囲を判断できない場合は、その端末で認証情報を入力せず、組織の管理者または専門家へ引き渡す。
- Claudeに使うメールを保護する。未感染と確認できる別の端末からメールのパスワードを変更し、ほかのセッションを失効させる。MFA、転送先、復旧用アドレス、フィルター、連携アプリも確認する。メールを奪われたままでは、Claudeのログインリンクや復旧手段も攻撃者に届き得る。
- Claudeの全セッションを失効させる。アカウントにアクセスできる場合は、Web版のアカウント設定から全端末ログアウトを実行する。特定のブラウザーを閉じるだけでは、攻撃者が持つ別のセッションを止められない。
- 盗まれた可能性のあるパスワードを変更する。感染端末のブラウザーに保存していた業務、金融、クラウドサービスの認証情報を優先し、使い回していたパスワードも変更する。各サービスで利用可能なMFAも有効にする。
- 支払い設定と利用履歴を確認する。Claudeの利用状況、Usage credits、月間支出上限、自動リロード、保存済みの支払い方法、カード明細を照合する。支払い方法の再登録は端末の駆除と認証情報の保護が完了してから行う。
会社支給端末や組織契約で利用している場合は、個人だけで復旧を完結させず、管理者へ端末、発見時刻、検知内容、利用量の変化を報告する。警告メールや請求記録は調査用に保存する一方、感染が疑われる端末で新たな機密情報を開かないことが重要だ。
追加クレジットと未確定の被害範囲

有料の個人向けプランでは、含まれる利用枠を使い切った後もUsage creditsで利用を続けられる設定がある。Anthropic公式のUsage credits案内 では、プリペイド残高、月間支出上限、自動リロードを「Settings」の「Usage」で管理でき、自動リロードを有効にすると残高が指定値を下回った際に追加購入が行われるとしている。
そのため、確認すべきなのは利用枠だけではない。身に覚えのないUsage creditsの消費や購入がないか、自動リロードと月間支出上限が意図した設定か、保存カードが削除されていないか、カード明細に未知の請求がないかを確認する。Anthropicによって支払い方法が削除されていた場合は、不正な追加購入を止めるための措置である可能性がある。
現時点で公になっているのは、一部利用者への警告、盗まれたセッションによる利用枠の消費、関連セッションのサインアウト、支払い方法の削除、不正と判断された請求の返金だ。影響を受けたアカウントの総数、地域別の内訳、攻撃の開始時期、すべての感染経路は明らかになっていない。駆除と再設定後も利用量が変化する、または不明な請求が残る場合は、記録を保存してClaudeのサポートとカード発行会社へ確認する必要がある。
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