Claude Fable 5.1に見えない透かし、短文と校正では判定しにくい

Anthropicが2026年9月1日に公開したClaude Fable 5.1とClaude Mythos 5.1では、生成文に統計的なテキスト透かしが付く。Claude Platformのリリースノート は、両モデルの文章が透かしの対象であり、Fable 5.1をClaude API、Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundryで提供すると記録している。
この透かしは読者の目には見えず、短文、事実中心の記述、軽い校正、コードでは判定材料が少なくなりやすい。9月1日に検出API情報が更新された Anthropicの技術解説 によれば、APIはプライベートプレビューであり、検出結果もAI生成や不正行為を断定するものではない。
文字を加えず、語の選び方に傾向を残す

Claudeの透かしは、ゼロ幅文字、隠し記号、定型句、文書メタデータを追加する方式ではない。モデルが次の語を選ぶ際、意味を損なわない候補が複数ある場面で、秘密鍵と直前の文脈に基づく疑似的なランダム性を使い、文章全体に統計的な傾向を残す。
採用されたのはGoogle DeepMindが公表したSynthID-Textを基にする方式だ。鍵を持つ検出側は、多数の語の選択が鍵と整合しているかを調べ、Claudeが文章の作成や編集に関わった可能性を確率的に評価する。透かし入りと透かしなしの文章を読者が見比べても、その違いを目で識別できるものではない。
選択できる語が多いほど、傾向を残す機会も増える。一方、正確な答えが事実上ひとつしかない場所では、不自然な語を選んでまで透かしを強めない。この設計が、文章の長さや内容によって検出しやすさが変わる理由になる。
短文、事実文、校正、コードでは材料が減る

短い文章は判定しにくい。語を選ぶ回数が少なく、偶然の偏りと透かしによる傾向を区別するための情報が不足するからだ。文章が長くなり、Claudeが独自に選んだ表現が増えるほど、関与を推定する際の確信度は高まりやすい。
人名、日付、数式の答え、固有の専門用語を並べる事実文にも同じ制約がある。正確性を保つために候補がほとんどない箇所では透かしが作用しないため、自由に表現できる長文より統計的な手掛かりが疎らになる。ただし、事実文なら透かしが一切残らないという意味ではない。
人が書いた原稿について、誤字、文法、句読点だけをClaudeに直させた場合、透かしを残せるのはClaudeが実際に選び直した部分だけだ。変更語が少なければ関与を検出できない可能性がある。これに対し、全面的な言い換えや翻訳では、ほぼすべての語をClaudeが選ぶため、軽い校正とは条件が異なる。
コードでは構文や演算結果などに正確さが求められ、任意の表現を選べない場面が多い。そのため通常の散文より透かしが少なくなりやすいが、コメントや同等の名前から選べる箇所には傾向が残り得る。「コードは常に検出不能」とまではいえない。
分かるのはClaudeが関与した可能性まで
検出APIが評価するのは、提出された文章にAnthropicの鍵と整合するパターンがあり、Claudeが作成または編集に関わった可能性だ。人間が書いたことを証明する機能でも、他社の生成AIを網羅的に見つける汎用検出器でもない。他社が別の鍵や方式を使えば、同じ方法では判定できない。
透かしが検出されても、「Claudeが全文を書いた」場合と「人間の文章をClaudeが大幅に編集した」場合は区別できない。反対に、十分な傾向が検出されなかったとしても、人間だけで作成した証明にはならない。文章の短さ、事実表現の多さ、Claudeによる変更量、生成後の全面的な書き換えが結果を左右する。
透かしには、氏名、アカウント、所属組織、会話内容を識別する情報が含まれない。透かしや鍵から利用者、組織、チャットを復元することもできない。検出結果は著者、著作権の帰属、法的責任について結論を出すものでもない。
検出APIはプライベートプレビュー

テキスト用の検出APIは、誰でもすぐ使える一般公開サービスではない。対象はEU法上の要件に関係する規制当局、法執行機関、報道機関、ファクトチェック組織、独立研究者、教育機関、EUの市民社会団体などの適格組織と、同様の確認義務を負う企業だ。アクセス希望を登録できるが、申請による即時利用は保証されていない。
MacRumorsの9月1日付報道 も、Fable 5.1の公開と見えないテキスト透かし、検出APIのプライベートプレビューを同じ発表の一部として伝えている。Anthropicは対象を段階的に広げる方針だが、一般公開の日程や判定しきい値、実環境での誤検出率は示していない。
画像、動画、音声などの対応ファイルに付与されるC2PA Content Credentialsとは仕組みが異なる。ファイル側は暗号署名された来歴情報をメタデータとして読むのに対し、テキスト透かしは語の選択に残る統計的傾向を秘密鍵で調べる。C2PA対応ファイルを確認できる手段があっても、テキスト検出APIが一般公開されたことにはならない。
教育・出版・法務で誤判定を避ける確認表
教育機関、出版社、法務部門が結果を扱うときは、検出可能な範囲と、結果からは分からない事項を分ける必要がある。少なくとも次の条件を確認しなければ、単独の判定を不正や著者認定の根拠にはできない。
- 文章に十分な長さがあり、Claudeが選べる表現を多く含むか。
- 短い回答、定型的な事実記述、数式、コードが中心ではないか。
- 人間の原稿に対する軽い校正か、Claudeによる大幅な編集や翻訳か。
- 結果をClaudeの関与可能性として扱い、全文生成の断定へ広げていないか。
- 透かしから個人、所属組織、会話を特定できないと理解しているか。
- 原稿履歴、引用、取材記録、版管理など別の証拠も確認しているか。
特に短い答案や軽い校正を受けた原稿では、「検出されないから人間だけが書いた」「検出されたから本人は何も書いていない」という読み替えは成り立たない。現在確認できるのは、Fable 5.1とMythos 5.1の生成文が透かしの対象となり、検出APIへのアクセスが限定されていることまでだ。今後の焦点は、APIの対象拡大と、判定基準や精度に関する運用データの開示になる。
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