WeatherNext 3を使う前に、3つの保存先と警報用途の境界を確認

WeatherNext 3の予報データを使うには、分析方法に合わせてBigQuery、Earth Engine、Google Cloud Storageのいずれかを選び、Googleアカウントでアクセスを申請する。SQLで集計・結合するならBigQuery、地図や地域単位で処理するならEarth Engine、個々のアンサンブルメンバーをPythonで扱うならCloud Storageが基本となる。
この三つは、同じ内容を異なる場所へ複製しただけではない。BigQueryとEarth Engineは地表変数の集計済み統計量を扱い、Cloud Storageは完全な生アンサンブルや大気の気圧面データも提供する。一方、どの提供先を選んでもWeatherNext 3は実験的な予報であり、公的な注意報・警報の代わりにはならない。
保存先は分析方法と必要な粒度で選ぶ

見出しの「保存先」は、厳密には三つのアクセス方法を指す。BigQueryはデータウェアハウス、Earth Engineは地理空間解析環境、Cloud StorageはZarrデータの保管場所であり、操作方法も取得できるデータの粒度も異なる。
- BigQuery:標準SQLによる時系列集計、地点・店舗・設備データとの空間結合、BIへの受け渡しに向く。地表変数はアンサンブル平均と複数のパーセンタイルとして提供される。
- Earth Engine:予報をImageCollectionとして読み込み、行政界や土地被覆などの地理空間データと組み合わせる用途に向く。広域の分布を地図化したい場合の入口になる。
- Cloud Storage:PythonとXarrayなどを使い、64メンバーの生アンサンブル、完全なモデル出力、三次元の気圧面変数を処理したい場合に向く。形式はチャンク化されたZarr v3である。
WeatherNext 3の公式クイックスタート は、三つの提供先について、Cloud Storageを生データ処理、Earth Engineを地理空間解析、BigQueryをSQL分析の選択肢として整理している。平均値やパーセンタイルで足りる処理に生アンサンブルを選ぶと、転送量と計算量が増えるため、まず必要な粒度を決めたい。
申請はGoogleアカウント単位、実行環境はプロジェクト単位で準備する

リアルタイムの運用データはアクセス申請制である。申請フォームにはGoogle Cloud Console、BigQuery、Earth Engineへのログインに使うGoogleアカウントのメールアドレスを入力する。一度許可リストへ追加されれば、三つの提供先ごとに別々の申請を出す必要はない。
- 実際にログインするGoogleアカウントを決める。
- 分析と課金に使うGoogle Cloudプロジェクトを作成または選択する。
- WeatherNext Data Requestフォームでアカウントと用途を申告する。
- 承認後、選んだ提供先から小さな範囲を読み取り、権限とスキーマを確認する。
申請は通常5~7営業日で承認されると案内されているため、即日利用を前提に導入日程を組まないほうがよい。BigQueryではAnalytics Hubのリスティングを自分のプロジェクト内のデータセットへリンクし、Earth Engineでは処理時にCloudプロジェクトを指定する。Cloud Storageの完全なアンサンブルを読む場合は、Requester Paysの請求先となるプロジェクトも必要になる。
BigQueryは1行の確認後に時刻と地域を絞る
BigQueryの初回確認では、リンク済みデータセットの0.1度テーブルに対してSELECT * FROM YOUR_PROJECT_ID.YOUR_DATASET_ID.weathernext_3_0_0_0p1deg LIMIT 1を実行する。プロジェクトIDとデータセットIDは、実際に作成された参照先へ置き換える。
BigQueryの公式手順 によると、テーブルはinit_timeでパーティション分割され、geographyでクラスタ化されている。各行にはグリッド中心、セル領域、初期時刻と、予報時刻・リード時間・変数別統計量を持つ繰り返しforecastレコードが含まれる。
スキーマを確認した後は、forecastを展開し、WHERE句でinit_timeを必ず限定する。さらに必要な変数と対象地域だけを選べば、全期間・全地域の走査を避けられる。店舗や設備の位置をBigQueryに保持している場合は、geographyまたはgeography_polygonを使った空間結合へ進める。
Earth EngineはImageCollectionを時刻とバンドで絞る
Earth Engineでは、0.1度グリッドのWeatherNext 3をImageCollectionとして扱う。最初は対象コレクションを読み込み、予報の初期時刻または期間、リード時間を限定し、temperature_2m_meanなど必要なバンドだけを選択する。
この提供先には、0.1度の地表変数について平均、p10、p25、p50、p75、p90の集計済み統計量が収録されている。個々のアンサンブルメンバーを復元する場所ではなく、地域ポリゴンによる集計、ラスタの重ね合わせ、地図レイヤーの作成に適した構成である。
初回処理では、全国規模の出力を作る前に、小さな地域と一つの予報時刻へ絞ってバンド名、単位、欠損値を確認する。Earth Engineのデータカタログ上ではPublisher Catalogのデータセットであり、Earth Engine自体が管理するデータではない点も、問い合わせ先を決める際に区別が必要だ。
Cloud Storageは生データを必要な範囲だけ遅延取得する
Cloud Storageには、完全なアンサンブルと集計済み統計量のZarrストアが用意されている。独自の確率計算、メンバー間の比較、気圧面解析には完全版を選び、地表の平均値やパーセンタイルだけで足りるPython処理には統計量版を選ぶ。
初回取得では、Xarray、Zarr、obstoreを使って対象ランを遅延オープンし、データセットの次元、座標、変数名を確認する。完全なアンサンブル側では、リクエストに請求先プロジェクトを指定する必要がある。権限エラーが出た場合は、許可されたGoogleアカウントと請求先プロジェクトが一致しているかを先に確認する。
グローバルデータ全体を最初からメモリへ読み込まず、変数、初期時刻、リード時間、緯度経度を選択してから計算を実行する。完全な64メンバー予報は数百GB規模になり得るため、必要なチャンクだけを取得するZarrとXarrayの遅延処理が前提になる。経度座標の表現も、既存コードの前提と一致するか最初の小規模取得で確かめたい。
警報用途では実験予報と公式情報を分離する

WeatherNext 3の出力は、需要予測、研究、社内のリスク分析や監視シグナルには使えるが、公的な予報、注意報、警報として扱うことはできない。WeatherNextの利用条件と免責事項 は、これを研究中の自動化された実験的AI予報システムと位置づけ、生命・財産に関する判断で単独の情報源にせず、地域の緊急当局や国の気象機関による公式情報を優先するよう求めている。
日本向けの画面や通知では、WeatherNext 3由来の予測値を「参考予測」や社内シグナルとして識別し、気象庁などが発表する公式の警報・注意報と同じ欄や同じ権威レベルで表示しない設計が必要になる。WeatherNext 3のしきい値超過を避難判断や対外的な警報発表へ直接変換する運用は、この境界を越える。
適用条件はデータが示す時点によって変わる。1時間未満前の時点に関するデータと将来予報にはリアルタイム実験データの利用条件が適用され、対象時点が1時間以上前になるとCC BY 4.0へ移行する。保存や再配布を実装する場合は、取得日時ではなくデータが関係する時点を基準に、適用条件、帰属表示、公式情報との分離を管理する必要がある。
ニュースレターを購読
Web3、AI、暗号資産の最新ニュースを受信箱にお届けします。