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AIだけでは解雇できない法案、カリフォルニア州で知事署名待ち

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます| 1
AIだけでは解雇できない法案、カリフォルニア州で知事署名待ち

カリフォルニア州議会は2026年8月31日、自動意思決定システム(ADS)だけに依存して従業員を懲戒・解雇することを禁じるSB 947を可決した。法案提出者のJerry McNerney州上院議員による 8月31日の可決発表 では、州上院と州下院で承認され、Gavin Newsom知事の判断を待つ段階に進んだとされている。

SB 947はAIの利用そのものを禁じるものではない。ADSを主な根拠として懲戒・解雇する場合に人間による確認と利用後の書面通知を求める法案であり、Bloomberg Lawの9月1日付報道 も、議会での最終承認と知事への送付を確認している。2026年9月2日時点では成立しておらず、企業に新たな義務が発生したわけではない。

禁止対象はAIではなく、最終判断の丸投げ

ADSの出力を人事記録や評価資料と照合し、人間が懲戒・解雇前に検証する工程

法案の中心は、雇用主がADSだけに頼って従業員の懲戒または解雇を決めることを禁じる点にある。ADSとは、機械学習、統計モデル、データ分析、AIなどからスコア、分類、推奨といった簡略化された出力を生成し、人間の裁量判断を補助または代替して自然人に重大な影響を与える計算処理を指す。

迷惑メールフィルター、ファイアウォール、ウイルス対策、ID・アクセス管理ツール、計算機、データベース、データセットなどは、この定義から除外される。したがって、製品名に「AI」とあるかどうかではなく、出力が人間の判断を補助または代替し、懲戒・解雇に使われたかが重要になる。

ADSの出力を主な根拠とする場合、雇用主は人間に判断を裏付けさせなければならない。確認には、管理職による評価、人事記録、本人の成果物、同僚の評価、証人への聞き取りなどを利用できる。出力を裏付けられない場合や、人間が不正確、不完全、誤解を招く内容だと判断した場合、その出力を懲戒・解雇に使うことはできない。

利用後通知と本人データの説明

ADSを主に使った懲戒判断と同時に従業員へ渡される利用後通知

ADSを主な根拠として懲戒・解雇した場合、雇用主はその決定を本人に伝える時点で、独立した平易な書面による利用後通知を渡す必要がある。通知は通常の社内連絡と同じ言語を使い、電子メール、リンクその他の利用しやすい書面形式で提供する設計になっている。

通知には、ADSを主に利用した事実、人間が判断を確認して出力を裏付けたこと、問い合わせ可能な担当者の連絡先、本人データに関する説明を求める権利、権利行使への報復が禁じられていることを含める。単に「AIを使用した」と知らせるだけでは、法案が列挙する内容を満たさない。

8月21日付の最終修正文 では、従業員が請求できるものはADSが使用した本人データの「意味のある客観的な説明」とされ、請求は12カ月につき1回に制限されている。以前の案にあった直近12カ月分のデータのコピーを渡す規定ではなく、第三者の個人情報は匿名化しなければならない。

最終修正で対象者と判断の範囲が縮小

最終修正では、対象者が広い意味の「worker」から「employee」に改められ、独立請負人は対象から外れた。アプリ上のアカウント停止などを想定した「deactivation」も、中心的な禁止・通知規定から削除されている。このため、古い法案概要に基づいて「請負人の業務停止まで一律に対象」と説明するのは正確ではない。

一方、雇用主の定義には民間企業だけでなく、州政府、自治体、特別区、州立大学などの公的雇用主も含まれる。労働請負業者や農業・外国人労働者を扱う一定の請負業者も定義に含まれており、対象企業は自社の法人所在地だけで判断できない。

一定の労働協約が法案の適用を明確に放棄し、賃金や労働条件を定め、アルゴリズム管理からの保護を備えている場合は適用除外となる。航空機開発や国家安全保障、軍事、宇宙、防衛に関する連邦法、連邦規則または拘束力のある連邦契約への対応に必要な利用にも、該当業務の範囲に限った例外が置かれている。

日本企業が確認できる四つの業務フロー

人事・法務・ITがADSによる雇用判断の検証、通知、データ説明、記録を分担する流れ

カリフォルニア州の従業員を持つ日本企業にとって、準備の起点は採用している製品の一覧ではなく、懲戒・解雇までの判断経路である。法案は成立前なので全面改修を確定する段階ではないが、どの出力が誰に渡り、何の判断に使われているかは現時点でも整理できる。

  • 人事部門:懲戒・解雇に使うスコア、分類、アラート、推奨を洗い出し、人間の判断者と確認資料を特定する。
  • 法務部門:利用後通知の文面、通常の社内連絡に使う言語、問い合わせ先、報復禁止の説明を整理する。
  • IT・データ部門:ADSが使った本人データと出力を判断記録に結び付け、第三者情報を匿名化した説明を作成できるか確認する。
  • 調達部門:外部ベンダーから使用データ、出力の根拠、処理履歴を取得できるかを契約と技術の両面で確認する。

人間の確認者を名目上置くだけでは足りない。判断記録には、確認者、参照した資料、ADSの出力を採用または退けた理由を残し、裏付けられない出力を実際に判断から除外できる工程が必要になる。

通知の作成も判断工程に組み込む必要がある。利用後通知は懲戒・解雇を本人に伝える時点で渡すため、手続き終了後に別部署がADSの利用履歴を探す運用では間に合わない可能性がある。

次に決まるのは知事の判断

2026年9月2日時点で確定しているのは、SB 947が州議会を通過し、知事の判断待ちになったことまでである。知事が署名すれば、法案に定められた施行時期に合わせて、人間による裏付け、利用後通知、本人データの説明を実装する必要が生じる。拒否権が行使されれば、SB 947による義務は発生しない。

成立した場合の執行主体として、州労働コミッショナーと公的な検察当局が規定されている。企業が当面区別すべきなのは、議会通過と法成立は同じではないこと、そして最終修正文では独立請負人、業務停止、直近12カ月分のデータコピーが主要要件から削除されていることだ。次の焦点はNewsom知事が署名するか、拒否するかに移っている。

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