AdobeとNVIDIAが制作AIを高速化、対象は主要5製品

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
AdobeとNVIDIAが制作AIを高速化、対象は主要5製品

米国時間2026年10月15日、AdobeとNVIDIAは、Photoshop、Premiere、Substance 3D、Frame.io、Brand Conciergeを含む主力5製品・サービスの制作AIや関連処理を速める提携拡大を発表し、RTX Spark向けの一部処理で最大2倍の性能を掲げた。契約金額は公表していない。

10月19日公開のAdobeの日本語発表では、NVIDIAのジェイソン ポール氏が「新しいワークフローを加速させます」と述べ、Frame.ioの一部の初期ワークロードについて、埋め込み生成が約5倍高速、P95処理遅延が4~5倍改善、検索用プロキシのサイズが約80%縮小したとしている。制作アプリの編集処理とFrame.ioのクラウド処理では、速くなる工程も数値の測り方も異なる。

Photoshop、Premiere、Substance 3Dで速くなる処理

Adobe Photoshopの削除ツールが対象とする、写真から不要な要素を取り除く編集結果

RTX Spark向けに最適化される制作アプリは、Photoshop、Premiere、Substance 3Dだ。Adobeが示す最大の速度向上は、これらのアプリで行うAI処理、編集、カラー調整、エフェクト処理のうち、対象となる作業に関するものだ。作品を開いてから書き出すまでの全工程が同じ割合で短くなる、という数値ではない。

Photoshopでは、GPUを使った合成処理を軸にアプリの構成を見直した。対象として挙がるのは、「削除ツール」で写真から不要な要素を取り除く操作と、画像上に「ガウスぼかし」や「ライトリーク」を直接適用する操作だ。効果を調整するたびに結果を見直す作業では、操作への応答が制作の流れに関わる。

Premiereでは、映像の再生やレンダリングに加え、エフェクト、カラー調整、AIツールを使うポストプロダクションの一部が対象となる。具体例は、録音した声を調整する「スピーチを強調」と、映像内の対象を切り分ける「オブジェクトマスク」だ。音声処理と映像処理を同じ「AI高速化」という言葉でまとめず、それぞれの編集段階で待ち時間が変わり得ると捉えるのが正確だ。

Substance 3D Painterでは、モデルの表面を作り込むテクスチャリングの負荷が高い工程を速める。Photoshopの画像合成、Premiereの再生・編集、Substance 3D Painterの質感制作は、必要な素材も計算内容も異なる。発表には各操作の比較条件や、一般的な制作案件を通した所要時間は示されていないため、最大値をすべての作業に当てはめることはできない。

Frame.ioは動画を検索できるまでの時間を短縮

Adobe Frame.ioでの動画素材検索を表す、多数の映像から特定の場面が見つかる対比

Frame.ioで対象となるのは、制作者のPC上でタイムラインを操作する速さではなく、アップロードされた動画をクラウドで処理し、検索に使える状態へ移す工程だ。素材の取り込み後に検索可能になるまでの時間が短くなれば、制作チームは増え続ける動画の中から必要な場面を探しやすくなる。

処理の内訳も示されている。動画のデコードにはNVIDIA NVDEC、コンテンツの前処理と検索用の埋め込み生成にはCUDAを使うNVIDIA TensorRTを採用する。計算負荷の高い処理をNVIDIAのGPUへ移すことで、検索に必要なデータを作るまでの待ち時間を減らす設計だ。Premiereで映像を再生したり色を調整したりする際の高速化とは、制作工程上の位置が違う。

公表されたFrame.ioの性能値は、トランスコードと検索に関する一部の初期ワークロードの結果だ。P95処理遅延は処理時間の分布を見る指標であり、埋め込み生成の速度とは測っている対象が異なる。また、検索用プロキシの縮小は、完成した映像ファイルの容量や画質が同じ割合で変化するという意味ではない。

この違いは、チームが受ける効果を考える際にも重要になる。編集者が既に見つけたクリップへ効果をかける工程と、大きな素材群からそのクリップを発見する工程では、待ち時間が生じる場所が別だからだ。Frame.ioの変更は後者に向けたもので、素材が追加された後の検索とレビューに関わる。

Brand ConciergeとFirefly Foundryの位置づけ

Adobe Brand Conciergeは、画像や動画を編集する制作アプリとは用途が異なる。企業が顧客との対話に使う仕組みをNVIDIA Nemotronのオープンモデルに合わせて最適化する取り組みで、NVIDIAは自社サイトでの顧客対応にBrand Conciergeを採用している。最適化された版は年内に企業顧客向けに提供される予定だ。

したがって、この製品の変更をCreative Cloudの編集画面が速くなる話として読むことはできない。提携には制作処理の高速化だけでなく、企業が顧客に合わせた応答を提供するためのモデル活用も含まれる。同じ発表に並ぶ製品でも、制作者が直接操作する機能と企業向けの対話機能では、利用者も提供形態も違う。

Adobe Firefly Foundryは両社の継続的な取り組みとして言及されている。一方、今回RTX Spark向けに具体的な高速化工程が示されたアプリはPhotoshop、Premiere、Substance 3Dだ。After Effects、Lightroom、Illustratorについては、今回の発表で個別の高速化工程が示されていない。Firefly Foundryも、今回の最大速度が示された制作アプリとして挙げられたわけではない。

エージェント型制作と提供状況

両社が掲げるエージェント型制作は、AIエージェントが制作者になじみのあるアプリを使う作業を見据えている。今回示された具体的な変更は、制作アプリのローカル処理、Frame.ioでのクラウド動画処理、企業向け対話体験に分かれる。エージェントという共通の方向性があっても、各製品で同じ新機能が同時に提供されるという発表ではない。

NVIDIAのRTX Spark発売時の発表によると、PhotoshopとPremiereのネイティブ対応は発売時点でベータ版として提供され、Substance 3Dの対応は今後となる。対応PCの発売と、Adobeの各アプリの最適化が正式版でそろう時期は分けて考える必要がある。

速度の公表値は両社が示した対象処理の最大値で、独立した第三者による一般的な制作時間の実測値として提示されたものではない。日本の制作者にとって次に具体性が増すのは、各アプリの正式な提供時期と、機能ごとの比較条件が明らかになったときだ。

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