失業率2.5%へ上昇、それでも就業者は前年比14万人増

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
失業率2.5%へ上昇、それでも就業者は前年比14万人増

総務省統計局の2026年8月分の労働力調査は10月2日に公表され、完全失業率は季節調整値で前月より0.1ポイント高い2.5%、就業者数は原数値で前年同月より14万人多い6849万人となった。失業率の上昇と就業者の増加は、比較する期間も、使っている数値の種類も異なる。

厚生労働省の8月分の一般職業紹介状況では、有効求人倍率は季節調整値で1.18倍と前月と同水準だった。働く人の総数が前年を上回る一方、直近では仕事を探す失業者も増えた。求人倍率まで含めると、8月の雇用指標は一方向に動いたわけではない。

二つの比較をそろえる

今回の数字は、原数値で前年の8月と比べた動きと、季節調整値で直前の7月と比べた動きに分けると整理しやすい。原数値はその月の人数の規模を示す。季節調整値は、毎年繰り返す季節的な変動を取り除き、月ごとの変化を見やすくしたものだ。

  • 原数値・前年同月比:就業者は6849万人で14万人増、完全失業者は180万人で2万人減。両者を合わせた労働力人口は7029万人で12万人増えた。
  • 季節調整値・前月比:就業者は6834万人で3万人増、完全失業者は177万人で10万人増。完全失業率は2.5%となり、0.1ポイント上昇した。
  • 求人の季節調整値・前月比:ハローワークの有効求人倍率は1.18倍で横ばい。有効求人数と有効求職者数は、それぞれ0.7%増えた。

前年同月比では、働く人が増え、失業者は減っている。一方、季節調整後の前月比では、就業者も失業者も増えた。同じ月の就業者と失業者は必ず逆方向に動くわけではないため、就業者が増えていても失業率は上がり得る。

完全失業率は、就業者と完全失業者からなる労働力人口に占める、完全失業者の割合である。仕事を持たず、働くことができ、積極的に求職している人は、率を計算する分子と分母の両方に入る。8月は季節調整後の就業者が小幅に増えた一方、完全失業者の増加幅がそれを上回った。

原数値の就業者6849万人と、季節調整値の就業者6834万人も、別々の系列として扱う必要がある。また、季節調整は項目ごとに行われるため、調整後の内訳を足した値が公表された総数と必ず一致するわけではない。人数の水準、前年との比較、前月からの変化を一つの計算に混ぜないことが、今回の動きを理解する鍵になる。

前月から増えた失業者の中心は自発的な離職

季節調整後の完全失業者は前月より10万人増えた。求職理由別では、自発的な離職、つまり自己都合で仕事を辞めて求職している人が6万人増え、増加の中心を占めた。非自発的な離職による失業者は2万人、新たに求職を始めた人は1万人増えている。

ロイターの報道は自発的な離職の増加を失業率上昇の主な要因と伝え、総務省の担当者の見方を「雇用情勢は悪くない」と紹介した。失業者数が増えたという結果だけでは、離職の事情までは分からない。今回の求職理由の内訳は、勤め先の都合による離職が一斉に増えた状況とは異なることを示している。

前年同月との比較では、原数値の完全失業者は180万人で2万人少ない。ただし、その内訳を見ると、自発的な離職による失業者は84万人で4万人増え、勤め先や事業の都合による離職者は23万人で2万人減った。失業者全体の前年同月比と、自発的な離職者の前月比・前年同月比は、それぞれ異なる問いに答える数字である。

自己都合で辞めた人が、その後に希望する条件の仕事へ移れたかどうかは、この求職理由の分類だけでは分からない。分類が示すのは、調査時点で仕事を探している人が、どのような理由で求職しているかだ。転職希望者にとっても、自発的な離職の増加を、希望する職種の採用機会が増えたことと同じ意味にはできない。

求人倍率が横ばいでも求人は増えた

有効求人倍率は、ハローワークで扱う有効求人数を有効求職者数で割った指標である。8月は季節調整後の求人と求職がともに前月比0.7%増えたため、倍率は1.18倍のままだった。倍率の横ばいは、求人や求職の件数が動かなかったことを意味しない。

失業率と有効求人倍率では、調べている集団も違う。労働力調査は世帯を対象に就業状態を推計し、ハローワークに登録していない求職者も、調査の条件を満たせば完全失業者に含む。一方、有効求人倍率はハローワークが扱う求人・求職の業務統計から作られる。在職したまま次の仕事を探す人もいるため、求人倍率の分母をそのまま完全失業者数とみなすことはできない。

求人の動きにも幅がある。8月の新規求人倍率は季節調整値で2.06倍と前月より0.04ポイント低下し、正社員の有効求人倍率は1.00倍で横ばいだった。後者の分母には、派遣社員や契約社員を希望する人も含まれるため、「正社員希望者だけに対する正社員求人の倍率」ではない。全国の就業地別有効求人倍率も福井県の1.72倍から大阪府の0.95倍まで差があり、全国平均を個々の地域の採用状況に置き換えることはできない。

採用側には労働参加の広がりが見える

原数値では、就業者と完全失業者を合わせた労働力人口が前年同月より12万人増えた。同じ期間に非労働力人口は27万人減り、15歳以上人口は17万人減っている。人口が減るなかでも、働く人や求職する人を含む労働市場への参加は広がった。ただし、この集計値だけで、誰が非労働力人口から就業者や求職者へ移ったかは特定できない。

就業者の内訳では、雇用者が前年同月より39万人増えた。役員を除く雇用者では、正規の職員・従業員が24万人、非正規の職員・従業員が15万人増えている。就業者全体の増加幅が雇用者の増加幅より小さいのは、就業者には自営業主や家族従業者なども含まれるためだ。就業者数の増減を、そのまま企業の新規採用人数として読むこともできない。

採用側にとって、求職者が増えたことは応募の余地が広がる可能性を示す一方、全国平均の倍率は職種や地域ごとの採用難を消さない。転職希望者にとっても、失業率の上昇だけで応募先が増えたとは判断できない。次の月に自発的な離職、有効求人と有効求職、就業者がそれぞれどう動くかによって、8月の変化が一時的なものか、続く動きなのかが見えてくる。

関連記事:

共有:

ニュースレターを購読

Web3、AI、暗号資産の最新ニュースを受信箱にお届けします。

0