MOTが資金調達、漫画家支援を「育成から仕事」までつなぐ

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
MOTが資金調達、漫画家支援を「育成から仕事」までつなぐ

東京都新宿区のMOTは2026年10月2日付の発表で、DBJキャピタルをリード投資家、松竹ベンチャーズ1号投資事業組合を引受先とする第三者割当増資の実施と、同年4月に始めたオンラインマンガスクール「カキコミ」の無料会員が1200人を超えたことを明らかにし、津持大和CEOは自社を「作家の仕事全体を回す側のパートナー」と表現した。調達資金はスクールの教育コンテンツとサービス、作家マネジメント体制の強化に加え、海外展開の準備と採用に充てる方針だ。

STARTUP LOGの資金調達情報にも増資の方式と引受先が記載されているが、調達額は示されていない。今回の資金調達で具体的に示されたのは投資規模よりも資金の向け先だ。MOTは漫画を学ぶ場と、作品を仕事として続ける作家を支える体制の双方を拡充する。

調達資金を講座と作家支援に振り向ける

MOTの事業は、漫画家を目指す人への教育と、活動する作家の実務を引き受けるマネジメントから成る。講座を増やすだけでは、受講者が作品を仕上げた後の仕事には対応できない。一方、作家を支える人員だけを増やしても、新しい作家や作品を育てる場は広がらない。両事業に資金を振り向ける計画には、活動の段階に応じて支援を用意する意図が見える。

採用予定の役割にも、その違いが表れている。作家マネージャーはスケジュール管理や企業との折衝を担い、スクールの講座運営・編集担当はカリキュラムの企画や講師、受講者への対応を担う。海外出版社やイベントに関わる担当、スクールの集客と作品の宣伝を扱う担当も募集している。授業の運営と商業案件の進行には別々の専門性が要るため、接点を持たせながら人員を整える構想だ。

MOTは漫画『彼女、お借りします』の宮島礼吏と津持CEOが共同で設立した。現役作家の経験は、何を教えるかだけでなく、仕事が始まった後にどの業務を支えるかにも関わる。スクールの受講者がそのままマネジメント対象になる制度は示されておらず、両事業をつなぐのは一律の移行手続きではなく、作家が活動を進めるなかで生じる異なる需要と捉えるのが正確だ。

「カキコミ」は作品の添削から編集者との接点へ

「カキコミ」では、動画で学んだ内容を作品づくりと結びつける仕組みが用意されている。ネーム、作画、キャラクター設計を扱う講座に加え、プロ漫画家が少人数の受講者の作品を見るゼミがある。講師と受講者が交流するコミュニティも設け、制作中の作品に助言を受ける機会をつくっている。

ここで重要なのは、添削がスクール内だけで完結しない点だ。ゼミ生の作品を出版社の編集者に直接見てもらう交流会が開かれ、担当編集者が決まった受講者もいる。新人賞に入賞したゼミ生の例も示されている。ただし、いずれも紹介された個別の成果であり、受講者全体のデビュー率を表す数字ではない。

受講対象には、これから漫画家を目指す人と、すでにプロとして描く人の両方が含まれる。前者には作品を完成させ、編集者に見せる機会までたどり着く支援がある。後者には、制作上の課題について現役作家や編集者から助言を得る機会がある。同じスクールでも、学習者の段階によって必要な講座や助言の中身は変わる。

動画講座、少人数のゼミ、編集者との接点を組み合わせることは、受講者が作品をつくり、第三者の評価を受けるまでの距離を縮める可能性がある。ただ、編集者がつくことと連載や継続的な収入を得ることは別の段階だ。MOTがもう一方の事業で担おうとしているのは、作品づくりの先にも続く作家の業務である。

マネジメントは執筆の外側にある業務を担う

作品が仕事になると、作家には執筆以外の対応も増える。MOTのサービス案内には、身の回りの支援や事務作業、作品の販売施策と企業との共同企画、ファンクラブやSNSの運用支援が挙がっている。創作に集中できる環境をつくるため、対外的な連絡や作品の発信を支えるのがマネジメント事業の役割だ。

スクールで行う添削とマネジメントには共通する目的があるが、提供する仕事は異なる。添削は作品の表現や構成を磨き、編集者との接点は出版に向けた機会をつくる。マネジメントは、作家の予定や問い合わせ、作品を広める企画を扱う。作品への助言が必要な時期から対外的な調整が必要な時期へ移っても、MOTにはそれぞれを支える事業がある。

この組み合わせには、教育で接点を持った作家との関係が、商業活動の段階まで続く可能性がある。同時に、マネジメント対象の作家が講師として経験を伝えることもできる。ただし、受講者がどの程度マネジメント契約に進むか、作家が講座運営にどの程度関わるかは公表されていない。両事業の売上や料金の内訳も示されておらず、教育収益とマネジメント収益が循環する規模はまだ判断できない。

そのため、今回の増資が支えるものを、受講者を作家契約へ移す仕組みと決めつけることはできない。確認できるのは、学習、作品への助言、編集者との接点、商業活動中の実務支援を同じ会社が扱っていることだ。事業が拡大する際には、それぞれに必要な人員を確保し、作家ごとに異なる支援を続けられるかが問われる。

松竹とDBJのネットワークは作品の展開段階で生きる

出資者のネットワークが作用し得るのは、主に作家や作品がスクールの外へ出た後だ。松竹グループは映像や演劇を含むエンターテインメント事業を手がけ、津持CEOはその知見を得ながら映像・演劇作品での提携も視野に入れている。松竹ベンチャーズ側も、クリエイターの育成・発掘に加え、グループのネットワークと作品展開の知見を組み合わせる意向を示した。

作品の展開には、作家本人の制作だけでなく、企画の相手方との調整や作品の発信が伴う。MOTのマネジメント事業が担う業務は、その段階で松竹側との接点を作家の仕事につなげるうえで関係する。ただし、今回の出資に伴って特定作品の映像化や提携が決まったとの発表はない。

DBJグループについて、MOTは全国の企業や自治体とのネットワークを使い、漫画を活用した仕事をつくる構想を掲げている。出版社以外からの依頼が生まれれば、作家には新たな仕事の相手ができる。その仕事を継続するには、企画の窓口、予定の管理、企業との折衝を担う体制も必要になる。今回の採用方針は、こうした商業案件を扱う人員の整備ともつながる。

海外展開は準備段階で、進出先や開始時期は示されていない。次に事業の進展を示すのは、拡充された講座の内容に加え、作家支援の体制と出資者のネットワークから生まれる具体的な仕事だろう。

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