東証のアジア支援は23社へ、日本進出からIPOまでつなぐ

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます| 4
東証のアジア支援は23社へ、日本進出からIPOまでつなぐ

東京証券取引所は2026年9月25日の発表で、「東証 アジア スタートアップ ハブ」の支援対象に新規7社と再選定16社、計23社を選び、対象を10の国・地域に広げた。日本での事業展開や日本企業との連携、資金調達を支え、将来の選択肢として東証でのIPOも支援する。

新規企業の対日関係は、すでに日本で事業を行う段階から、日本を進出先と位置づける段階まで幅がある。支援対象企業の概要には、ベトナム産農産品を日本へ輸出するTechCoop、Hunter Japanの買収を通じて日本市場に入ったPacifica Retail、日本を海外展開の候補とするBoboboxなどが並ぶ。国・地域の区分は各社の申告に基づき、会社概要は各社が作成した内容を東証が翻訳している。

新規7社の事業と日本との接点

新たに選ばれた企業は、宝飾品、農産品、宿泊、美容、ファッション、越境購入、金融サービスにまたがる。日本との既存の取引や事業と、今後の進出構想を分けると、提携先としての役割が見えてくる。以下の上場準備上の論点は、各社が公表した上場計画ではなく、事業内容から考えられる説明課題だ。

  • 韓国・amondz Lab Inc.:ジュエリーブランド向けに、越境EC「Amondz」、在庫と受注を扱う「BEJEWEL AI」、製造基盤を提供する。韓国と日本で事業を始めており、新規企業の中では日本市場への参入が進んでいる。将来の上場を考えるなら、販売、システム提供、製造がそれぞれどのように収益へ結びつくかが説明の焦点になる。
  • ベトナム・TechCoop Investment & Technology Pte. Ltd.:農産品の調達から品質管理、輸送、貿易金融までを扱う。コーヒーや加工果実に加え、ベトナム産の生鮮バナナを日本へ輸出し、日本の輸入事業者と連携している。日本との接点は進出構想にとどまらず、現在の取引にある。上場準備では、商品の売買と信用供与に伴う収益やリスク、取引の追跡可能性をどう示すかが論点となる。
  • インドネシア・Bobobox International Pte. Ltd.:都市向けのカプセル宿泊施設「Bobopod」と、自然の中で滞在する「Bobocabin」を運営する。日本を海外展開、提携、資金調達の戦略的市場と位置づけている。日本での施設開業や提携先は今回の企業概要に示されておらず、事業化が進めば、施設の立地、運営体制、拠点ごとの採算が説明課題になる。
  • タイ・KONVY PTE. LTD.:美容商品の小売・流通を手がけ、日本のビューティーブランドの東南アジア進出を支援する。市場参入から流通、販売、ブランド育成までを担うため、日本企業にとっては現地の販路を持つ相手だ。上場準備では、ブランドとの取引条件と、進出先ごとの事業収益をどう整理するかが焦点となる。
  • タイ・Pacifica Retail Co., Ltd.:ファッションや生活関連商材を流通させ、タイ、香港、日本で事業を展開する。Hunter Japanの買収によって日本市場に参入しており、日本事業の形が具体的に示されている。複数地域の小売事業と買収した事業を、グループ全体の業績や運営体制の中でどう説明するかが上場準備上の論点だ。
  • 香港・Buyandship Holdings Limited:海外商品の購入と配送を結ぶ越境ショッピング事業を営む。日本は同社にとって最大の仕入先市場で、日本の投資家からも支援を受けている。日本の販売事業者には海外の購入者へ届く経路となる。将来の上場を考える場合、市場別の取引と、購入・配送に伴う収益や費用の把握が重要になる。
  • モンゴル・AND Global Pte. Ltd.:モンゴルで始めたデジタル融資事業の経験を、信用評価や融資管理など金融機関向けの技術に生かす。持株会社はシンガポールにあり、アジアの複数市場で事業を展開する。日本での個別の提携先は示されていない。投資家に事業を説明する際は、自ら行う融資と金融機関への技術提供を分け、それぞれの収益とリスクを示すことが論点となる。

同じ「新規選定」でも、日本との関係は異なる。amondz LabとPacifica Retailには日本での事業があり、TechCoopには日本向けの輸出取引がある。KONVYとBuyandshipは日本の商品を海外市場へ届ける側に立つ。一方、Boboboxが示すのは日本での展開構想であり、AND Globalについては日本での具体的な案件が明らかになっていない。

日本企業にとっての提携機会

今回の選定は、日本に進出する企業だけを集めたものではない。日本の農産品輸入事業者にとってTechCoopは調達先との接点になり、日本の美容ブランドにとってKONVYは東南アジアでの流通と販売を担う候補になる。Buyandshipでは日本が主要な仕入先市場であり、日本の商品を扱う事業者には海外の購入者へ届く経路がある。

国内で事業を広げる側では、提携相手に求める役割も変わる。日本で事業を始めたamondz Labには販売や製造に関わる接点があり、Pacifica Retailには買収した日本事業を含む小売・流通の基盤がある。Boboboxが日本で施設展開を具体化するなら、立地や運営に関わる事業者との関係が必要になると考えられる。ただし、同社の選定をもって日本での出店が決まったわけではない。

提携機会の違いは、事業の向きにも表れている。TechCoopは東南アジアから日本へ商品を運び、KONVYとBuyandshipは日本の商品やブランドを海外の消費者へ届ける。国内拠点の有無だけで見るより、既に動いている取引と、これから相手を探す事業を分けた方が、各社と日本企業の接点を具体的に捉えられる。

事業支援は上場準備へどうつながるか

支援の出発点は各社の事業上の需要にある。日本企業との連携や国内での事業拡大を進める過程で、資金調達、投資家との関係、将来のIPOに向けた準備が課題になる。再選定された企業の中からは、日本企業との新たな業務提携や日本法人の設立に至った例も出ている。ただし、それは今回加わった各社の成果を示すものではない。

TechCoopの選定を受けた発表では、ジャパンデスク責任者のKoji Mitsuo氏が「The TSE Asia Startup Hub puts us in front of Japan’s investors, listed companies and advisors」と述べた。同氏は、上場企業に求められる水準の情報開示とガバナンスにも言及している。日本の取引先や投資家との関係を広げることと、事業を説明する体制を整えることが、同社にとって並行する課題だ。

その準備は業種によって同じ形にはならない。TechCoopには農産品取引と信用供与、Boboboxには宿泊施設の運営、AND Globalには融資と金融機関向け技術、Pacifica Retailには複数地域の小売事業と買収した日本事業がある。それぞれの実績やリスクを投資家に示せる形にすることは、上場を目指す場合に避けられない。ただし、支援対象への選定は東証への上場や各社の商品・サービスを保証するものではない。

支援対象は毎年定期的に見直される予定だ。次に焦点となるのは、新規企業が日本でどの取引や事業を具体化し、既存の接点をどこまで広げるかである。日本企業にとっても、選定企業の名前だけでなく、輸入、販路、施設運営、金融サービスという実際の事業接点が、今後の提携を見極める材料になる。

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