any styleとJR東日本系が提携、推し活を地域送客へ

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
any styleとJR東日本系が提携、推し活を地域送客へ

JR東日本の子会社であるJR東日本スタートアップと、VTuberを活用したマーケティングを手がけるany styleは、2026年10月15日に資本業務提携への合意を発表した。関東・甲信越から東北までの1都16県を視野に、地域応援企画から鉄道での現地訪問を促すことと、推し活をふるさと納税につなげることを柱に据える。地産品の認知向上と、地域に継続して関わる人の創出が狙いだ。

今回の合意には、両社がすでに取り組んだJRE MALLでの販売企画と現地イベントという土台がある。ツーリズムメディアサービスの報道も、2023年秋のスタートアッププログラムを起点とする実証で地産品の認知向上と現地への送客があったと伝える。今後の焦点は、企画ごとに生まれた関心を商品購入、鉄道利用、寄付へと広げ、続けられる地域ビジネスにできるかどうかだ。

提携が結ぶ、ファンと地域の接点

両社が掲げる地域ファンづくりには、異なる行動への入口がある。VTuberの発信をきっかけに地産品を知り、購入する。地域応援企画や現地での催しを目的に列車で訪れる。さらに、推し活への関心をふるさと納税という形で地域への支援につなげる。提携は、これらの接点を組み合わせる構想として発表された。

役割を考えるうえで重要なのは、両社が持つ接点の違いだ。any styleはVTuberの起用や企画・イベント運営を手がけ、JR東日本グループにはJRE MALLでの商品販売と鉄道による移動の接点がある。配信で商品を知ったファンに購入先を用意し、地域に足を運ぶ理由もつくるという流れが想定される。ただし、同じファンが購入、乗車、寄付のすべてを行うことまで示されたわけではない。

資本業務提携について公表されたのは合意と事業の方向性で、出資額や持分、地域ごとの企画開始時期は明らかになっていない。対象に掲げた全域で新しい施策が始まったという段階でもない。現時点では、過去の企画で確認された行動と、提携後に目指す事業を分けて捉える必要がある。

JRE MALLで確かめた購入のきっかけ

先行する実証の中心は、VTuberがライブ配信で地産品を紹介し、JRE MALLでの購入につなげる取り組みだった。商品の味や背景を配信者自身が伝えることで、従来はその地域の商品を知らなかったファンにも選ぶきっかけをつくる。JR東日本スタートアップは、この取り組みで地産品の認知度が向上し、現地のVTuberイベントによる地域への送客も実現したとしている。

認知と送客は、同じ企画から生まれていても別の成果だ。配信を見て商品を買う行動には、現地へ行かずに地域と関わる道がある。一方、イベントへの参加は、訪問の目的をつくる。公表された成果からは、その接点がそれぞれ機能したことは分かるが、商品購入者のうち何人が列車に乗って訪れたかという連続した行動までは読み取れない。

この違いは、提携後の収益モデルを考える際にも効いてくる。地産品の売上、催しへの参加、鉄道の利用、ふるさと納税による寄付は、それぞれ地域に届く経路が異なる。過去の実証が示したのは、VTuberを通じた商品への関心と現地訪問の接点であり、寄付まで含めた事業全体の実績ではない。

福島編では販売企画を列車内の沿線案内に接続

鉄道と地産品を一つの企画に収めた具体例が福島編だ。JR東日本などによる2025年7月の福島編の発表では、37名のVTuberが福島県の地産品を紹介し、JRE MALLで税込5,000円の地産品セットなどを販売する計画を示した。セットの販売数上位4名には、特急ひたちで常磐線沿線のスポットを紹介する車内放送を担当する役割も設けた。

この仕組みでは、ファンが配信を通じて商品を選ぶ行動が、列車内での地域紹介にもつながる。放送を担当するVTuberを販売数で決めたため、商品への反応が鉄道上の企画に反映される設計だった。商品を売る場所はJRE MALL、沿線への関心を深める場所は特急ひたちと、役割がはっきり分かれている。

福島編で販売したのは地産品であり、列車内放送が扱ったのは沿線の見どころだ。今回の提携が掲げるふるさと納税は、この事例からさらに広げようとする領域に当たる。商品を買う動機と地域へ向かう動機を同じ企画で扱えた経験を、寄付を含む継続的な関係にどう結びつけるかが次の課題になる。

次に問われるのは、訪問と寄付をどう事業にするか

提携後の構想では、地域応援企画による鉄道送客と、推し活を通じたふるさと納税が二つの柱となる。現地イベントを訪問の目的にできれば、VTuberのファンが地域を知る機会は通販の画面外にも広がる。寄付を組み合わせれば、訪問できない人にも地域と関わる別の方法が生まれる。いずれも両社が目指す方向であり、新たな施策の利用実績が発表されたわけではない。

事業としての成否を左右するのは、個々の接点がどこまで実際の行動につながるかだ。商品の紹介が購入を生むか、催しが鉄道での訪問を促すか、推し活をきっかけに寄付が集まるか。それぞれの結果が分かれば、生産者、沿線地域、自治体にどのような価値が届くかも具体的になる。出資条件とともに、次の地域企画の内容や開始時期、訪問と寄付の実績が今後の判断材料となる。

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