政府AI「源内」を18万人へ、エージェント利用に新基準

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます| 3
政府AI「源内」を18万人へ、エージェント利用に新基準

デジタル庁は2026年10月20日の発表で、政府職員約18万人を対象にガバメントAI「源内」のエージェントチャットを各府省庁等へ順次導入し、利用ルールを定めた「源内基準」を公表した。職員が業務に合わせてAIエージェントを作成・実行できる環境を広げる取り組みであり、対象職員全員への導入が同日に完了したという発表ではない。

公表された源内基準は、職員が確認していないAIの出力を行政資料や公文書へ直接転記しないよう求め、連続処理の重要な段階には人の確認や承認を置く。利用者に加え、府省庁内の利用範囲を決める管理者と、基盤を運用する源内開発者の責務も定めた。作業をAIに任せる範囲が広がっても、結果を行政の判断や対外的な説明に用いる責任は人と組織に残る。

順次導入するエージェントチャットでできること

エージェントチャットは、源内のチャット画面から使う環境だ。職員が目的を伝えると、複数の資料の読解、情報整理、Web検索、文書や表の作成といった工程を組み合わせ、成果物まで仕上げる。業務手順を再利用するための「スキル」も作成・実行できる。単発の質問に答える機能に加え、資料を参照しながら作業を進められる点が今回の拡張である。

ただし、外部情報の取得はWeb検索を通じて行い、任意のURLを指定してサイトを直接読み取る機能はない。ファイル操作に使えるのは利用者本人の作業領域で、職員の端末を直接操作したり、源内開発者が管理していない外部APIやMCPサーバーへ直接接続したりすることもできない。アップロードした原本はAIが上書きできず、編集が必要な場合は複製物を扱う設計になっている。

この作業領域には保存量の上限があり、ファイルの永続的な保存は保証されない。原本を保護する設計があっても、AIが作成したファイルには編集、移動、上書き、削除が起こり得る。重要なファイルを扱う職員には、対象を絞り、原則としてバックアップを確保し、操作後に結果を確かめることが求められる。

職員が作った手順を府省庁をまたいで共有する「源内ライブラリ」の構想も示されている。スキルには業務手順や参照資料、判断基準をまとめられるが、共有された手順を別の部署で使う際にも、その部署が参照できる情報と実行できる操作の範囲は守らなければならない。

転記前だけでなく、処理の途中にも人が入る

出力の確認は、完成した文章を読み直すだけでは足りない。職員は指示を入力する前に、含める情報や参照資料が業務目的に合うか、利用する権限があるかを確かめる。回答や成果物については、根拠資料、数値、引用、法令、宛先などを自ら点検し、重要な判断、行政上の処理、外部への発信には必要な確認・承認を経る。

AIが作業を連続して進める場合は、途中の操作にも境界がある。ファイルの更新・削除やデータ登録のように影響の大きい処理では、対象と範囲を事前に確認し、実行の可否を職員が判断する。意図しない動作や異常な出力に気付いた場合は処理を止め、必要に応じて管理者へ報告する。

Webページや添付ファイルに紛れた命令を、AIが利用者からの指示と取り違える危険も想定されている。外部情報を参照する際は、本文を装った命令や管理者からの指示を偽る記述に従っていないか、実行内容と出力を確かめる必要がある。個人情報を入力する場合は特定された利用目的に必要な最小限にとどめ、組織が認めていない私用のAIサービスへ非公開の業務資料を渡すことも禁じられる。

許認可、給付、不利益処分、採用など、国民の権利利益に影響する業務では統制を強める。業務の重要度、影響範囲、誤りを回復できるかによって利用を制限し、人による確認や承認、処理履歴の保存を組み合わせる考え方だ。AIが出した案を採用するかどうかは、担当職員と行政機関がそれぞれの権限に応じて判断する。

利用者・管理者・開発者の責務

安全要件は職員個人の注意だけに委ねられていない。誰が成果物を確認し、誰が利用権限を決め、誰が基盤の変更や事故に対応するかによって、責務が分かれる。

  • 利用者:入力情報と参照資料の適切さを確かめ、AIの回答、作成したファイル、実行した処理を検証する。重要な操作には確認や承認を挟み、内容を理解できないコードやコマンドを安易に実行しない。異常を認識した場合は処理を停止する。
  • 管理者:各府省庁等で利用できる業務、機能、情報と職員の権限を定め、教育、リスク評価、事故対応を整える。権利利益に影響する業務では利用範囲を制限する。高度な源内工房については、業務上の必要性や職員の理解度を確認したうえで権限を付与する。
  • 源内開発者:開発環境と本番環境を分け、権限、変更承認、操作記録を管理する。本番環境への変更には他の開発者によるレビューと権限者の承認を要し、障害時に利用停止や復旧を行える手順も整える。

源内工房は、エージェントチャットより操作の自由度が高い。職員が多段階の情報収集や動く試作品の開発を行え、プログラムの作成・修正、コマンド実行、ファイル操作、Webサイトへの直接アクセスを組み合わせられる。その分、生成されたコードや操作の内容、影響範囲、安全性を実行前または公開前に確認する能力が必要になる。

源内工房の利用権限は初期状態では付与されず、管理者が申請と職員の習熟度などを確認して認める設計だ。外部へのデータ送信を遮断し、通信や操作のログを残す措置も定められている。一方で、Webから取得した情報に不適切な指示が混じる可能性は残るため、利用者による確認と、問題が起きた際の停止措置が要る。

源内工房の導入と自治体への広がり

今後の導入・公開日程は、源内工房を2026年12月ごろまでに導入する目標と、エージェントチャットと源内工房を「源内OSS Ver.2.0」として2027年2月ごろをめどに公開する予定から成る。OSSは誰でも利用・改変・再配布できる形を想定している。源内工房の提供とOSS公開はいずれも予定段階であり、現時点で一般職員や自治体が直ちに使える機能として扱うことはできない。

自治体に関係するのは、政府職員向けの基盤に参加することと、公開後のOSSを使って自ら環境を整えることの違いだ。前者はデジタル庁が各府省庁等へ展開する環境であり、後者では導入する組織が運用や情報管理を担う。源内基準はデジタル庁が提供する政府向け環境を対象に策定されており、自治体が参考にする場合も、利用権限、入力できる情報、人による承認、事故時の停止を自らの体制で定める必要がある。

次の節目は、源内工房が実際にどの府省庁等へ導入されるか、そしてOSSとしてどの機能が公開されるかだ。高度な操作が職員に開かれるほど、管理者が権限を与える条件と、人が処理に介入できる地点が運用上の焦点になる。

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