銀行残高を会話で照会、ANSERのAI化は行員実証から

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
銀行残高を会話で照会、ANSERのAI化は行員実証から

NTTデータとNTTデータ東海は、あいち銀行と「残高を教えて」などの自然文で口座情報を照会する実証を2026年10月26日から始めると、10月21日の発表で明らかにした。あいち銀行の行員・関係者が個人向けバンキングアプリ「My Pallete」のテストアプリを使い、残高と入出金明細を呼び出す。口座情報にはテストデータを使い、一般の顧客は参加しない。

対象は文字入力による照会業務で、送金など資産を動かす操作は含まれない。AI Watchの報道は、この実証で得る知見を金融機関向けサービス基盤「ANSER」へのAI活用拡大につなげる方針を伝えている。個人向けアプリでの限定的な検証から始め、法人向けサービスなどへの展開を検討する構図だ。

行員が使うデータと操作の範囲

実証参加者は、あいち銀行の行員・関係者だ。参加者は一般利用者の立場でテストアプリにログインし、対話画面へ進む。銀行の窓口業務をAIに任せる試験ではなく、アプリを使う人が日常的な言葉で照会を頼んだとき、必要な口座情報へつながるかを調べる。

照会できるのは、テストデータ上の口座残高と入出金明細に限られる。残高を尋ねる、支出の明細を求める、直近の入出金を見たいと伝えるといった使い方が対象だ。実際の顧客が自分の口座情報を会話で取得できるサービスとして提供する段階には入っていない。

回答の範囲にも境界が設けられている。目的外の入力にAIが任意の内容を返さないよう、出力は残高、入出金明細、固定文言のエラーメッセージに制限される。会話の入口から自由に銀行取引を進める仕組みではなく、対象を絞った照会体験を検証する設計だ。

自然文からAPI照会へ、情報はどう届くか

参加者の入力は、そのまま口座データを探す検索語になるわけではない。AIエージェントが文章から求められている情報を判断し、NTTデータが提供するAPIを通じて該当する照会を行う。実証で想定される流れを、利用者の操作に沿って並べると次のようになる。

  1. 参加者がMy Palleteのテストアプリから対話画面を開き、知りたい残高や明細を自然文で入力する。
  2. AIエージェントが依頼の意図を解釈し、必要な照会処理を判断する。
  3. APIを介して、テストデータから残高または入出金明細の情報を取得する。
  4. 取得した情報を参加者に提示する。続く確認や選択には、従来の画面操作を組み合わせる方法も検討する。

この流れで重要なのは、利用者が目的のメニュー名を知っていることを前提にしない点だ。口座の残高一覧を求める言い方と、今いくら入っているかを尋ねる言い方は異なっても、必要な照会が同じ場合がある。一方、明細を求める文章には期間や支出への絞り込みが含まれることもあり、AIにはその違いを処理へ反映する役割がある。

対話だけで操作を完結させることも、今回の前提ではない。最初の問いで必要な情報へ進み、表示された内容を画面で確認したり、画面上の選択を使って次へ進んだりする方法を検討する。自然文が役立つ場面と、既存の画面操作が分かりやすい場面を、参加者の利用を通じて見極める。

実証で調べるのは照会結果と対話の傾向

検証項目には、用意した機能の過不足と、参加者がAIにどのような言葉で操作を頼むかが含まれる。残高や明細が表示されたかだけでなく、同じ目的に対して表現がどう変わるかを調べる。利用者の言い方と照会機能の対応が、今後のサービス設計に使う材料になる。

また、参加者が残高と入出金明細以外にどのような情報や操作を求めるかも確認する。そうした要望を調べることと、その場で対象外の取引を実行することは別だ。今回は照会に範囲を定めたまま、将来どの機能を検討すべきかを探る。

画面との組み合わせも検証対象となる。自然文によって目的の情報に到達できても、提示された内容を理解し、その後の確認や選択を続けられるかは別の問題になる。参加者の対話内容と画面上の操作を合わせて見ることで、照会に至るまでと照会後の使い方を調べる計画だ。

ANSERへの拡大は今回の結果を踏まえて検討

NTTデータとNTTデータ東海は、実証で得る知見を既存サービスの高度化と、AIを組み込んだ新サービスの企画・開発に生かす方針だ。個人向けのMy Palleteでは、利用者に応じて情報を案内する使い方を構想する。法人向けインターネットバンキング「AnserBizSOL」と法人向けアプリ「BizSOL_Pallete」では、金融機関の職員や利用企業の業務支援を視野に入れる。

これらは、金融機関向け基盤ANSER全体へAI活用を広げる将来の方向として示されている。今後は照会以外の業務や利用対象者の拡大に加え、音声入力と多言語対応も検討する。実サービスに向けては、AIの回答を監視・評価する機能や、ANSERなど既存システムと連携してデータを活用する仕組みの適用も検討対象だ。

その判断の起点となるのが、行員・関係者による照会実証だ。まずは予定された開始後に、参加者の言葉が適切な照会へ結び付くか、対話と画面を組み合わせた利用方法にどのような需要があるかを調べる。対象業務と利用者をどこまで広げるかは、その知見を踏まえた次の検討事項となる。

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