
AGENTIC STAR 3.0はAIの失敗件数まで見せる

ソフトバンクは2026年10月26日の発表で、法人向けAIエージェント基盤「AGENTIC STAR 3.0」を同日から提供開始した。新たなプロジェクト機能では、AIが実行する作業と人が判断・確認する工程を一連の業務として管理できる。AIによる完了件数だけでなく、失敗件数、処理時間、工程と処理結果の実行履歴も把握できる。
同じ10月26日付のAI Watchの報道は、AGENTIC STAR 3.0の提供開始と、従来のチャット機能とは異なる料金体系を伝えた。今回の変化は、個別の依頼への応答に加え、複数の工程からなる業務を継続して動かし、その経過を記録できることだ。導入企業は「何件終わったか」と「どこで止まったか」を同じ業務の流れの中で捉えられる。
AIと人の判断を一つのワークフローに置く

プロジェクト機能は、AIに任せる工程と人の確認を要する工程を組み合わせて業務を設計する。従来のAGENTIC STARが利用者の目標から計画を立て、必要なツールを使って判断・実行するサービスであるのに対し、新版では、その働きを人の判断を含む一連の工程に組み込める。AIの処理が終わった時点と、業務として完了した時点を分けて考えられる設計だ。
たとえば、情報を集めて案をまとめる工程をAIに任せ、その案を採用するかどうかは担当者が判断する、という分担が考えられる。これは業務の組み方を示す例であり、特定の導入先で確認された運用ではない。判断を要する箇所を工程として置けば、AIの出力後に誰が先へ進めるかが明確になる。
承認の位置は処理時間の意味も変える。AIの実行自体が短くても、人の確認待ちが長ければ、業務全体の終了は早まらない。一方で、後から差し戻す負担が大きい判断を無条件に自動化すれば、完了件数が増えても手直しが残る。新版の価値は、人を介す工程を業務の外側に置かず、実行の流れと一緒に扱える点にある。
失敗件数と実行履歴で、止まった工程が見える

完了件数だけでは、同じ仕事を何度やり直したかは分からない。失敗件数と処理時間を並べると、処理量の増加に伴って中断や遅延も増えているのかを見られる。実行履歴にはAIが進めた工程と処理結果が記録・蓄積されるため、問題が起きた際に最終結果からだけでなく、途中の処理から経緯をたどれる。
ただし、製品が示す「失敗」を、そのまま業務上の不合格と同一視することはできない。AIの実行が途中で止まった場合と、処理は終わったものの人が内容を差し戻した場合では、直すべき箇所が違う。前者なら実行条件や工程の接続、後者なら入力条件や成果物の基準が論点になる。製品が可視化する件数に、企業側で把握した差し戻しを重ねて見る必要がある。
数え方にも注意がいる。一つの業務を一件とするのか、AIが担当した工程ごとに一件とするのかで、完了率の分母は変わる。再実行を新しい一件として数えれば件数は増え、同じ業務内の再試行として扱えば増えない。失敗した手順の評価と結び付ける際も、実行の失敗、品質上の差し戻し、人の判断による却下を混ぜないことが大切だ。
実行履歴が役立つのは、失敗の件数が増えたという結果から、どの工程に問題が集中したかへ視点を移せるからだ。同じ工程で中断が続くなら、業務全体を作り直す前に、その工程の条件を見直す余地がある。反対に、AIの処理は終わるのに承認で繰り返し戻されるなら、実行の安定性と成果物の適合性は別々に評価できる。
導入前後のKPIは人の工数まで含める
導入効果は、AIが表示する件数や処理時間だけでは決まらない。企業が比較したいのは、同じ種類の業務を終えるまでに必要な総時間と、人が負担した作業時間がどう変わったかだ。処理件数が増えても、承認や手直しの時間が増えれば、担当者の負担が減ったとは言えない。
比較可能なKPIにするには、製品の記録と社内で記録する判断を分けておくと整理しやすい。製品側の完了件数、失敗件数、処理時間、実行履歴に対し、企業側では承認待ち、確認作業、差し戻し、手直しの時間を対応付ける。開始から終了までの時間と、そのうち人が実際に作業した時間も別の指標になる。
- 完了・失敗を数える単位を、業務全体か個別の工程かで統一する。
- AIの実行失敗と、人が内容を差し戻した件数を分ける。
- AIの処理時間に、承認待ちと人の確認・手直しの時間を加えて業務全体の所要時間を見る。
- 導入前後で対象業務の種類、成果物の基準、測定期間をそろえる。
これは製品が自動的にすべてのKPIを算出するという説明ではなく、公開された指標を導入効果の比較に結び付けるための整理だ。たとえば導入前後をそれぞれ同じ長さの期間で比べても、後の期間に難しい案件が偏れば平均処理時間は伸び得る。件数と時間だけでなく、対象にした仕事の条件もそろえなければ、AIの寄与を読み違える。
承認を残す工程を決めるときも、同じ記録が材料になる。定めた条件に沿って繰り返せる処理と、結果を採用する責任を伴う判断では、人の関わり方が異なる。実行履歴で止まりやすい工程を特定し、差し戻しの記録と照らせば、AIに任せる範囲を広げるべき箇所と、人の確認を維持すべき箇所を区別しやすくなる。
プロジェクト機能の料金は個別見積もり
費用対効果の計算では、契約の違いも見落とせない。AGENTIC STARの利用プランでは、チャットプランは利用者数に応じた契約、プロジェクトプランは業務の規模に合わせた個別見積もりとされ、両方を組み合わせることもできる。公開ページに金額は示されていないため、掲載価格を使った一律の費用試算はできない。
チャットプランの利用を前提にした費用と、新たな業務プロジェクトの費用を同じものとして扱うと、削減額の見積もりがずれる。契約費用のほか、人の承認や差し戻しに残る工数も計算に入れる必要がある。完了件数が同じでも、確認の負担が大きい業務と小さい業務では、得られる効果は異なる。
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