
AI面接の「判断」をどこまで任せるか、PeopleXが新基準へ対応

PeopleXは2026年9月28日の対応方針で、同月14日から適用された厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」を踏まえ、対話型サービス「PeopleX AI面接」の設計を公表した。面接の質問は利用企業が事前に設定し、回答に応じた深掘りの有無と方向性も企業が選ぶ。面接後の評価レポートには採用判断に踏み込む文言を含めず、同社はサービスが職業紹介に該当しないとの見解を示した。
採用企業が人の判断を残すべき場所は、最後の採否決裁だけではない。厚生労働省の業務運営要領の現行本文は、企業が設定していない質問を回答の明確化に必要な範囲を超えて行う場合と、「貴社において採用すべき人材です」などの評価を企業へ渡す場合を、職業紹介に当たる例として挙げる。事業者の判断をAIが自動で行っていても区分は変わらない。現行本文は10月1日適用版で、今回の発表が対象とした9月14日適用版とは版が異なる。
質問と深掘りは誰が決めるのか
面接をサービスに任せる際の境界は、AIが話した回数ではなく、質問の目的と範囲を誰が決めたかにある。企業が設定した問いに対し、候補者の答えの意味を確かめる追加質問は、会話を成立させるための補助として考えられる。一方、事業者側の判断で別の適性項目を持ち込み、その回答を選考材料に加えるなら、企業が依頼した面接の内容そのものが変わる。
公表された設計では深掘り質問も可能だが、行うかどうかと方向性は利用企業が選び、回答の趣旨を明確にする範囲を超えないとされる。この説明で重要なのは、企業が最初の質問文だけを渡す形にはしていない点だ。たとえば職務経験を尋ねる面接なら、経験の期間や担当した役割を聞き直すことと、企業が設定していない人物像をAIが独自に探ることでは、追加質問の役割が違う。後者を許す設計なら、質問を作る権限が実質的に事業者へ移り得る。
利用企業の関与は、設定画面で質問案を承認する行為だけでは測れない。どの回答を明確にしたいのか、どの方向への深掘りを認めるのかが決まって初めて、候補者が実際に受ける面接の範囲が定まる。AIが回答に合わせて問い方を変えても、その変化が企業の定めた範囲に収まるというのが、今回示された役割分担である。
記録を渡すことと、採用を勧めることの差
面接後の出力にも、判断の境界がある。録画・録音や文字起こし、録画データへの日付の付記は、やりとりの内容を変えずに企業へ伝える行為として整理される。これに対し、面接内容を評価して採用を勧める文言とともに渡すことや、評価を企業へ渡すかどうかを事業者が決めることは、候補者と企業の意思疎通に事業者の判断を加える行為となる。
PeopleX AI面接が出力する評価レポートは、会社の説明では客観的な分析結果を提示するもので、採用を勧める文言を含まない。録音や文字起こしと違い、分析結果には回答を整理し、評価項目に結び付ける工程がある。そのため、単にレポートという形式を取るか、点数を示すかだけで境界を決めることはできない。何を評価し、その結果が企業へどう提示されるかが実質的な論点になる。
採用担当者が評点や要約を選考に使う場合、どの発言に基づく評価なのか、自社の採用基準とどう結び付くのかを解釈する余地が残る。これは、レポートを受け取るたびに面接をやり直すという意味ではない。分析結果を候補者への採否勧告として扱うのか、企業が判断するための材料として扱うのかで、人が担う役割が変わるということだ。
工程別に見る、委託できる作業と残る判断
今回の設計を採用の工程に沿って並べると、サービスが行う作業と企業が決める事項を分けやすい。次の整理は公表された機能と業務運営要領の例示に基づくもので、個別の導入設定について法的な結論を示すものではない。
- 質問設計:利用企業が面接で用いる質問を事前に設定する。面接の実施を委託しても、何を確かめるために尋ねるかは企業の選考方針に属する。事業者が独自の判断で質問を追加するなら、その範囲と目的が区分に影響する。
- 深掘り:AIは候補者の回答に応じて追加質問を行える。公表された設計では、有無と方向性を利用企業が選ぶ。企業の質問への回答を明確にする問いと、新しい評価項目を立てる問いを区別する工程である。
- 評価レポート:サービスが面接結果を分析して提示する。採用を勧める文言を含めないという設計上の境界が示された。企業には、分析結果を自社の評価項目や面接での発言と照らし、選考理由としてどう位置付けるかが残る。
- 採否判断:候補者を次の選考へ進めるか、採用するかを企業が決める。ただし、最後に人が承認する形式だけでは、前の工程で誰が質問や情報の提示を決めたかは変わらない。
面接サービスが別の採用管理機能と結び付く場合には、候補者情報の流れも関係する。事業者が独自の判断で、情報を渡す相手や渡す候補者を選別したり、提供先に応じて内容を加工したりすれば、面接中の質問や評価レポートとは別の判断が加わる。個々の機能名よりも、選別、加工、伝達を実際に誰が担うかが重要になる。
最終決裁より前に残る説明責任
PeopleXの対応表明は、利用企業が質問の範囲を決め、サービスが対話と分析を行い、企業が結果を使って選考するという分担を示した。職業紹介に該当しないという結論は同社の見解であり、行政が個別サービスを認定したという意味ではない。採用企業にとっては、採否の決裁者を置くだけでなく、候補者に何を聞き、AIの分析を選考理由へどう取り込んだかを説明できることが、人の関与の具体的な中身になる。
PeopleXの代表を務める橘大地氏が代表理事を務める「AIによる採用面接・人事評価サービス協議会」(AIAC)も、会員各社と改正内容を踏まえた設計に取り組む方針を示した。今後、質問の設定方法や評価の提示方法が変われば、利用企業が委ねる判断の範囲も変わり得る。選考理由を説明する場面では、最終決裁の記録に加え、その前の工程で企業が定めた質問と評価基準が意味を持つ。
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