AIで仕事量は増えた、エンジニアの42%が燃え尽き悪化

|著者: QUASA編集チーム|2 分で読めます
AIで仕事量は増えた、エンジニアの42%が燃え尽き悪化

人材サービス企業Terminalの 2026年9月24日の発表 によると、世界のソフトウェアエンジニア1800人超を対象とする調査で、77%がAIによって付加価値の高い仕事に取り組む能力が増えたと答え、42%が前年より燃え尽きが悪化したと回答した。AIでこなせる仕事が増えても、その分を追加の要求に振り向ければ、負担が軽くなるとは限らない。

翌25日の HRTech Edgeの掲載記事 も、能力の拡大が仕事の圧力の低下に直結していない点を取り上げた。ただし、今回の数字は回答者の認識であり、実際の労働時間や担当案件数を導入前後で測ったものではない。AIが燃え尽きを引き起こしたという因果関係も、この調査だけでは確定できない。

能力の拡大と燃え尽きは別の質問への回答

「付加価値の高い仕事に取り組む能力が増えた」という回答は、処理した案件数や完成した製品の品質を実測した結果ではない。また、燃え尽きの悪化は回答者が前年の自分と比べて感じた変化であり、同じ人を継続して追跡した比較結果ではない。二つの割合を並べても、能力が増えた人のうち何人が燃え尽きを訴えたかは分からない。

それでも、開発現場にとって重要な問いは残る。実装に使う時間が短くなった場合、その余力が休息、品質改善、新しい機能のどこへ向かうかは、AIではなく仕事の計画が決めるからだ。納期を一律に縮めたり、空いた時間をすべて追加案件で埋めたりすれば、仕様の判断や成果物の確認に使う時間が圧迫される可能性がある。これは今回の調査が検証した結果ではなく、数字を受けて検討すべき管理上の仮説である。

調査対象には米国、カナダ、欧州、中南米のエンジニアが含まれる。日本だけの集計は公開ページに示されておらず、国内の開発者に同じ割合を当てはめることはできない。一方で、AIが生み出した能力と、職場が要求する成果を別々に見る必要があるという論点は、日本の開発責任者にも通じる。

AIの利用が深まるほど、確認する仕事の重さが変わる

Terminalの 調査公開ページ では、目標を定め、AIエージェントに構築・テスト・出荷を任せる「AI-native」が回答者の37%を占める一方、すべてのコードを手作業で書く人は約3%とされる。発表資料でより細かく示された後者の値は3.3%で、公開ページの「約3%」とは丸め方が異なる。同じ資料は、AIでコードを生成する「AI-enabled」とAI-nativeを合わせた割合を70.3%としている。

ここでいう利用の深さは、AIを開いた回数ではなく、開発工程のどの部分を任せるかの違いだ。実装案を得る時間が短くなっても、仕様に合っているか、既存のコードと整合するか、不具合や保守上の問題を残さないかという判断は必要になる。調査の分類だけから、レビュー時間が実際に増えた、あるいは減ったとは言えない。

開発計画では、生成にかかった時間だけを見て次のスプリントの工数を下げると、この確認作業を過小評価しやすい。たとえば実装案の作成が早まっても、レビューを担う人数が変わらなければ、確認待ちの変更が積み上がる可能性がある。実装、レビュー、テスト、手戻りを分けて見積もり、途中で追加した仕事と延期した仕事も区別すれば、能力の増加がどこに使われたかを把握しやすい。

完了したタスクの件数だけでは、品質改善に使った時間も見えにくい。AIで得た余力を新機能へ振り向けたチームと、テストの補強へ振り向けたチームでは、短期の完了件数が違っても、その数字だけで後者の生産性が低いとは判断できない。今回の調査は、こうした配分ごとの品質や燃え尽きの差までは示していない。

研修と採用の数字は、企業の支援も問う

AIの利用が進む一方、学ぶ機会の提供には地域差がある。社内にAIの学習プログラムがあると答えた割合は、米国で41%、中南米で25%だった。これは両地域の企業を同じ条件で比較した研修の質の評価ではないが、AIを使うことと、その使い方を組織が教えることは別だと分かる。

新しいツールの習得を業務として求めながら、その時間を計画に入れなければ、学習は既存の仕事に上乗せされる。研修の有無だけでなく、勤務時間の中で受講や試行にどれだけ時間を使えたかが、実際の支援を見分ける材料になる。AIの利用率を高める目標とスプリントの納期を同時に設定する場合は、学習に使う時間をどちらの見積もりにも埋もれさせないことが重要だ。

採用見通しも地域で異なる。AIによって今後のソフトウェアエンジニア採用が増えると予想した回答は、米国で53.9%、カナダで28.9%だった。これらは回答者の見通しであり、企業の採用予定人数でも、実際に増えた採用枠でもない。仕事を速く進められるという認識から、人を増やす、あるいは減らすという結論を直接導くことはできない。

選考でのAI利用に対する反応も一様ではない。回答者の56%はAIによる面接を経験しており、37%はAI面接によって応募先企業への関心が下がると答えた。二つは異なる質問への回答で、AI面接を経験した人の37%が関心を失ったという意味ではない。選考にかかる作業を減らす判断には、候補者が企業をどう評価するかという別の影響が伴う。

増えた能力をどう配分したかは、まだ分からない

就業機会への見方と、仕事を人に勧める気持ちの間にも差がある。将来の就業機会に自信がある回答者は75%だった一方、学生にエンジニアの道を勧める人は69%で、前年の調査より7ポイント低かった。自分には次の仕事を見つける力があると考えることと、現在の働き方を魅力的だと考えることは同じではない。

発表資料は、多くの回答者が翌年に新しい仕事を探すつもりだとも記す。ただし、燃え尽きの悪化が転職意向をどの程度左右したかは示していない。報酬についても、より多くを求められながら給与が変わらないという圧力に発表資料は言及するが、仕事量と賃金の変化を対応させた実測値は公表していない。

開発責任者や人事担当者が今回の結果を仕事の設計に引き寄せるなら、AI利用率と完了件数だけでは判断材料が足りない。スプリント中の追加要求、レビューの滞留、手戻り、勤務時間内の研修、報酬への納得感、転職意向を併せて見れば、増えた能力が納期短縮、品質改善、負荷軽減のどこへ配分されたかを捉えやすくなる。ただし、この指標の組み合わせで燃え尽きが減ると今回の調査が検証したわけではない。

現時点で確認できるのは、調査対象のエンジニアにAIによる能力の拡大を感じる人と、前年より強い燃え尽きを訴える人が、ともに多かったということだ。仕事量や労働時間の実測、同じ回答者の継続的な変化、日本だけの結果は公開情報からは分からない。AIで生まれた余力を追加業務へどれだけ振り向けたのか、その判断と負担の関係を確かめるには、チーム単位の仕事量と確認工程を追うデータが必要になる。

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