
Fabric IQがCopilotに接続、社内データの意味まで渡す

Microsoftは2026年9月28日、バルセロナのEuropean Microsoft Fabric + SQL Community Conferenceで、Fabric IQとCopilot Chat・Coworkの連携の正式提供を発表した。Power BIのセマンティックモデルにある指標、データ間の関係、業務上の定義を回答や後続の作業に利用し、既存のアクセス制御を引き継ぐ。
利用者がCopilot Chatで業務上の数字を尋ねると、アクセスできるPower BIのデータと、その数字を定義するモデルが回答の根拠になる。Coworkでは得られた知見を複数段階の作業に使える。一方、データとその業務上の文脈を組織の境界を越えて共有するIQ Sharingは、今回の正式提供には含まれずプレビュー段階にある。
Power BIの「数字の意味」をどう渡すか
連携の要点は、数値の検索先が増えることより、数値の解釈に使う定義をCopilotへ持ち込めることだ。Power BIのセマンティックモデルには、レポートで使う指標とデータ同士の関係が収められている。Fabric IQはその土台を利用し、質問への回答を組織が管理する業務定義に結び付ける。
たとえば売上予測について尋ねる場合、回答に関わるのは集計済みの値だけではない。どの項目を売上と数え、どの期間や関係で集計するかという定義も関わる。同じセマンティックモデルをレポートとCopilotの双方で使えば、両者が別々の定義を参照する事態を減らせる。ただし、モデル内の定義そのものが部門間で揺れていれば、連携だけで解消されるわけではない。
Chatでは、利用者の質問に合うPower BIコンテンツを探し、その背後のモデルを使って答える。Coworkはデータから得た答えを、文書作成など後続の作業につなげる。Microsoftが今回示した正式提供の範囲はこのChatとCoworkであり、新しいCopilot Code体験への統合は将来のFrontierプログラムを通じた提供予定としている。
既存の閲覧権限が回答の範囲を決める
Copilot経由でも、Power BIで見られないデータを利用者が新たに見られるわけではない。Microsoft LearnのCopilot Chat向け製品文書によると、回答には利用者が閲覧を許されたレポートとセマンティックモデルを使い、モデルに設定された行レベルおよびオブジェクトレベルのセキュリティも適用される。対象コンテンツへの権限に加え、利用に必要なライセンスも求められる。
この仕組みでは、同じ質問でも利用者ごとの閲覧権限によって回答の材料が変わり得る。行レベルの制御で見えない取引は、その利用者の集計に含まれない。オブジェクトレベルで隠された項目も、質問文に名前を書けば参照できるようになるものではない。既存の権限設計が、対話による利用にもそのまま影響する。
権限が十分でも、期待したレポートが必ず選ばれるとは限らない。Copilot Chatは関連するPower BIコンテンツを検索する一方、広い質問ではファイルやメールなどMicrosoft 365内の別の情報も回答に使い得る。レポートを会話に添付しても、回答の情報源がそのレポートだけに限定されるわけではない。数字の出所が重要な場面では、回答がどのレポートとモデルに基づくかが品質を左右する。
データの新しさもモデルに依存する。回答に反映されるのはセマンティックモデルの直近の正常な更新までで、常にリアルタイムの値とは限らない。また、Power BIコンテンツの機密ラベルはCopilot Chatの会話や、そこから作られるコンテンツにも引き継がれる。閲覧権限、意味定義、更新状態はそれぞれ異なる役割で回答を形づくる。
Copilot連携は正式提供、IQ Sharingはプレビュー
今回の発表群を一つの提供状況として扱うと、社内での質問回答と社外への共有を取り違えやすい。Fabric IQのCopilot Chat・Cowork連携は正式提供で、既存のPower BIコンテンツを回答や作業の根拠に使う。IQ Sharingはプレビューとして、管理対象のデータと、その意味を示す文脈を組織の境界を越えて共有する機能だ。
両者は扱う境界が違う。Copilot連携では、質問する利用者がすでに持つPower BIの権限が参照範囲を決める。IQ Sharingでは、どの資産と業務上の文脈を別の組織へ渡し、元の資産に対する統制をどう保つかが焦点になる。社内でCopilotの回答にモデルを利用できることから、同じ共有機能が社外向けにも正式提供されたとは判断できない。
関連するFabric Appsは、アプリから既存データへ直接接続する方向の変更だ。9月29日付のTechTargetの取材記事は、アプリがFabricのウェアハウス、SQLデータベース、レイクハウス、Power BIセマンティックモデルへデータを複製せずに接続できると伝え、MicrosoftのAzure Data最高技術責任者Amir Netz氏の言葉「Everything is centered around the concept of context」も紹介した。
データを複製せずに接続するという説明はFabric Appsの接続方式に関するものだ。Copilotの回答処理全体やIQ Sharingの動作まで同じ条件だと広げて解釈することはできない。ただ、モデルに定義された業務上の意味を、レポート以外の製品からも利用するという点で、これらの発表はつながっている。
Power BI利用企業に残る境界
Power BIで指標を整備してきた企業にとっては、その定義をレポート利用者以外のCopilot利用者にも届ける経路が加わった。効果を左右するのは、Copilotに渡す前からモデルに何が定義され、誰がどの行や項目を見られるようになっているかだ。モデルの更新が遅れていれば、整った定義に基づく回答でも値は古くなり得る。
現時点で社内の質問と作業に使える連携と、プレビュー中の組織間共有では、適用する権限や共有範囲の判断も分かれる。取引先などへデータの意味を渡す場面では、IQ Sharingが正式提供へ進む際に対象となる資産と統制条件がどう定まるかが、次の判断材料になる。
関連記事:
関連記事
ニュースレターを購読
Web3、AI、暗号資産の最新ニュースを受信箱にお届けします。




