子どもの相談をAIが整理、学校向け「メンタリ」が始動

ソフトバンクは2026年8月27日、小学校、中学校、高等学校などを対象とするAI活用サービス「メンタリ」の提供を開始した。朝日新聞の同日報道 も、教員の業務負担を減らし、子どもが悩みを相談しやすい環境を整えるための新サービスとして、同日の提供開始を伝えている。
メンタリでは、AIが児童・生徒への助言や診断を担うのではなく、アンケート回答の分析と、チャットでの傾聴、相談内容の言語化・整理を受け持つ。ソフトバンクの公式発表 によると、教師には緊急性の通知やチャットの要約、専門家らが監修した対応情報が示され、最終的な確認と対面支援は教師側に残る。利用開始後の一定期間は、効果検証を目的として無償提供される。
AIは助言せず、子どもの言葉を整理する
児童・生徒は、教師が設定した時間内に、サービスのキャラクター「モフ」とAIチャットで話すことができる。モフは最近の困り事などを聞き、会話の文脈に沿って質問しながら、本人だけでは説明しにくい悩みを言葉にする過程を支える。
設計上の要点は、子どもに接するAIの役割が傾聴と内容整理に限定されていることだ。AIが児童・生徒の判断や行動に影響する助言を行わないため、メンタリは心の状態を診断するシステムでも、解決策を子どもへ指示する相談員でもない。
一方、教師側には、AIが分析・要約した相談内容とともに、専門家や精神科医が監修した類似事例や対応方法が提示される。対応情報を受け取るのは子どもではなく教師であり、教師はそれを参考材料として本人への聞き取りや支援を検討する。この分担により、AIは教師に代わる判断主体ではなく、面談に入る前の情報を整える役割を担う。
アンケートの警告とチャット共有は別の経路

メンタリには、学校生活の問題や要望を尋ねるアンケートと、児童・生徒が悩みを話すAIチャットという二つの入口がある。教師は任意の質問項目を設定でき、児童・生徒は学校配布のタブレットなどから回答する。AIは自由記述を含む回答を分析し、緊急性が高い相談内容を検知した場合に教師へ通知する。
ケータイ Watchの取材記事 では、教師がアンケートのアラートの有無にかかわらず、必要だと考えた児童・生徒をチャットへ招待できること、子どもの画面に招待した教師が示されること、チャット後に教師が会話と要約、類似事例、対応方法を確認できることが報じられている。
- 教師がアンケートを作成し、回答できる期間や時間帯を設定する。
- 児童・生徒が回答し、AIが自由記述を含めて分析する。
- 緊急性が高いと判定された回答について、教師にアラートを出す。
- 教師が必要と判断した児童・生徒をAIチャットへ招待する。
- AIが相談を傾聴・整理し、教師が会話や要約を確認して対応を検討する。
したがって、アンケートのアラートとチャット内容の共有は同じ処理ではない。前者は注意を要する回答を教師が早く確認するための通知で、後者は会話を通じて整理された相談を教師へ渡す経路である。いずれも教師の判断材料であり、AIの判定だけで事実関係や深刻度が確定するわけではない。
提出前に本人へ確認、途中終了時は予定送信

チャットで相談がある程度まとまると、モフは児童・生徒に「先生に提出するか」を尋ねる。整理した内容を教師へ渡す前に、本人の提出意思を確かめる工程が置かれており、すべての会話を即座に自動転送する仕組みとは異なる。
ただし、提出確認があるからといって、本人が明示的に提出を選ばない限り情報が共有されないとは限らない。取材で説明された運用では、児童・生徒がチャットへの回答を途中でやめた場合も、指定された期日に内容が送信される。学校には、通常の提出確認と中断時の送信条件を分け、利用前に子どもへ分かる言葉で伝えることが求められる。
児童・生徒用アプリは、周囲から端末をのぞかれる可能性に配慮し、回答結果の履歴を端末側に残さない仕様とされる。ただし、子どもの画面に履歴が残らないことと、教師側へ情報が送られる条件は別である。誰が、いつ、どの内容を確認できるのかは、学校の運用説明で明確にする必要がある。
警告も要約も、教師の状況判断を代替しない
教師が確認するAIの要約は、長い会話から論点をつかむための補助情報であり、子どもの状況を確定するものではない。言葉の背景や家庭・友人との関係、直近の変化は、教師や適切な支援者が本人との対話を通じて確かめる領域として残る。
アンケートのアラートも同様に、優先して確認すべき回答を示すシグナルと位置付けるのが妥当だ。公開された説明では、具体的な判定基準や誤検知・見逃しの割合は明らかにされていない。警告を診断結果とみなすことも、警告がないことを安全の証明とすることもできない。
ソフトバンクが掲げる目的は、アンケートの作成、回収、分析を一元化して教員の作業を減らし、児童・生徒への対面支援に使える時間を増やすことにある。想定される情報の流れは、AIが子どもの声を拾って整理し、教師が元の回答や会話と照合したうえで、面談や支援の要否を判断するというものだ。
効果検証で問われる相談と支援のつながり
サービスはすでに提供開始の段階にあるが、利用開始から一定期間は無償の効果検証に充てられる。取材記事ではトライアル期間は約1年、その後の料金は児童・生徒と教師の双方について1アカウント当たり月額150円とされている。導入する学校や自治体には、契約時点の提供条件を改めて確認する必要がある。
今後の焦点は、搭載機能の数ではなく、アンケートの処理や相談把握にかかる教員の作業がどれだけ変わり、整理された相談が必要な対面支援へつながるかにある。アラートの精度、要約の有用性、児童・生徒が提出と送信の条件を理解できたかも、安全な学校運用を評価する材料になる。
現段階で確認できるのは、メンタリが2026年8月27日に提供を開始し、効果検証の期間に入ったことまでだ。導入校数、検知精度、教員の負担や子どもの相談行動に対する効果は、公開された開始時資料には示されていない。AIを傾聴と整理にとどめる役割分担が現場でどう機能するかは、検証結果と各校の具体的な運用によって判断される。
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